食事詰まらせ死亡、配膳ミスでアレルギー…相次ぐ学校事故、県教委の姿勢に疑問の声
京都新聞 2020/4/1(水) 18:39配信
滋賀県立長浜養護学校(長浜市)で昨年秋、校外学習中に食事を気管に詰まらせた生徒が死亡するなどの事案が3件相次いだ。県教育委員会はいずれも速やかに公表せず、県議会や識者からは情報公開の在り方や事故の検証方法を疑問視する声が出ている。
死亡事案は昨年11月29日、重い知的障害があり肢体不自由の生徒が、校外学習中に飲食店で昼食を気管に詰まらせた。介助していた担任の臨時講師が異変に気付き、応急措置を施したが心肺停止状態で搬送され、約20日後に死亡した。
県教委の発表は2月中旬。北村昭夫校長は「四十九日の法要を迎え、保護者の公表に対する気持ちが少しずつ変わってきた」とした。一方、「保護者に説明ができていない」などとして、学校名を伏せるよう各社に異例の要請もした。
その後も同校では、死亡事案以前に、乳製品アレルギーがある児童が誤って給食の乳製品入りパンを食べて搬送されたことや、生徒の個人情報入りのファイルを紛失していたことが明らかになった。県教委は、いずれも「生徒が回復した」「プライバシーに配慮した」などを理由に非公表にしていた。
報道後、福永忠克教育長は会見で「公開が基本だが、個々のケースで判断した」などと釈明した。だが、情報公開に詳しい同志社大の真山達志教授(行政学)は「問題を社会で共有してもらうとの認識が欠けている。給食の配膳ミスも命に関わる。早く周知されていれば、死亡事故を防ぐことにつながったかもしれない」と指摘する。県議会でも「警察に届け出る必要はなかったのか」「学校の対応に問題がなかったか、第三者に判断してもらう必要があるのでは」との声が上がった。
文部科学省が2016年にまとめた「学校事故対応に関する指針」では、死亡事故や大けがなどが発生した場合、学校は学校設置者に報告する必要がある。死亡事故では、各都道府県教委などに対し、国に報告した上で、有識者らによる詳細調査など行い、事故報告書を公表することを求めている。
指針では「原則、全ての事案で詳細調査を行うことが望ましい」とする。しかし、実際に死亡事案で詳細調査の報告をしたのは16年度以降、国に報告があった全国102件のうち8件にとどまる。
同校の死亡事案は、同校と県教委による内部検証にとどまった。県教委は「内部検証で学校の対応に問題がないと判断し、保護者の要望もなく、詳細調査は行わない。指針が示す調査の目的や目標は達成できた」とする。
しかし、指針を策定した有識者会議のメンバーで京都精華大の住友剛教授(教育学)は「問題の有無は客観的に調査して明らかにするべきだ。外部の目が入れば、関係者だけでは気付けない背景が明らかになる可能性がある」と批判し、「このような事案は全国で起こりうる。指針に基づき、各学校が実情に合わせた事故対応マニュアルを作成し、教委が支援する必要がある」と強調する。