アメフト部悪質タックルでクローズアップされた日大の「雇止め」 講師が“告発”〈週刊朝日〉
AERA dot. 2018/6/8(金) 12:11配信
日本大学のアメフト問題では、ドイツ語の講師をしている志田慎(しだ・まこと)さん(50)に、関心が集まった。日大出身で約20年間、非常勤講師をしている
志田さんは、2学部で週10コマの授業を教えている。
アメフト部の悪質タックルで問題になった前監督の内田正人氏(62)は日大の常務理事をようやく辞任したが、これまで人事担当として権力を振るってきた。
そして内田氏ら幹部の差配で、2016年に三軒茶屋キャンパスに開学した「スポーツ科学部」と「危機管理学部」で、英語を担当した非常勤講師14人が、今年3月末付けで雇止めとなって職を失ったという。
志田さんは授業のかたわら,首都圏大学非常勤講師組合の日大ユニオン準備会代表として、待遇改善に取り組んできた。
アメフト問題で、日大の内田前監督の“独裁”が話題となり、非常勤講師の雇止めの問題もクローズされるようになったという。
「内田さんが人事部長になったのが2014年で昨年秋、人事担当の常務理事に就任しました。そして昨年10月から11月頃、約20人の非常勤講師から『雇止めを通告された』と相談を受けました。そして、今年3月末には実際に解雇になった。あまりにもひどい扱いで黙ってはいられない」
日大企画広報部によれば、5月1日現在、大学院、学部、短期大学部において従事する非常勤講師は延べ3910人。実際に何人が解雇されたのか、実数は把握しがたいという。
「日大のキャンパスは、北は福島県郡山市から南は静岡県三島市まで、いろんなところに点在しているから。情報がほとんど入って来ない学部もありますので」
内田前監督とは、一度も労使交渉の場で話す機会がなかったという。
「労使交渉に内田さんは出て来たことがないんです。経営側の代表として理事が最低一人は出るのが普通だと思うんですがね。日大はずっとそうで、課長クラスと弁護士くらいしか出てこないから、交渉にならない」
志田さんによれば、日大では最終的に非常勤講師をゼロにする「ゼロ化計画」が進行しているという。
「私は日大と1年契約を毎年繰り返して、更新してきました。(有期労働の契約が通算5年を超えた場合、労働者の申し込みによって無期労働契約に転換される)『5年ルール』に従って、今春、無期雇用への転換を大学に申し込みました。それでも、日大では数年かけて非常勤講師を減らしていき、最終的にはゼロにしたい計画があると聞いています。それに大学では第2外国語が必須ではないところが増えてきているので、私が担当しているドイツ語の授業も、この先、どうなるのか、不安ですね」
志田さんによれば、日大の総授業数は約2万コマあるが、それを数年かけて2割削減され、その分、非常勤講師もいらなくなる可能性があるという。
アメフト問題では、加害選手が謝罪会見を開いたり、学生部員が声明を発表し、世間の注目を集めた。
「私も日大出身のOB。後輩たちがよくやってくれているなと思っています。日大の人事は内田前常務理事のトップダウンで決まってきたから、これを機会に非常勤の雇止め問題にもメスが入って欲しい」
日大に取材を申し込むと、文書で以下の回答があった。
──非常勤講師約20人に対して、雇止めを通告したというのは事実ですか?
「問われている対象校は、スポーツ科学部及び危機管理学部のことかと存じます。仮にそうであるならば、両学部において英語を担当した非常勤講師14名を平成30年3月31日付けで雇止めしたことは事実です。ただ現在、当該非常勤講師が所属する労働組合と本件で係争中につき、これ以上の回答は差し控えさせていただきたく存じます」
──人事担当の内田前常務理事は非常勤講師との労使交渉の席に一度も出席したことがなかったという指摘がありますが、本当ですか。どうして出席しなかったのでしょうか。
「本学では、団体交渉の出席者は交渉案件によりその都度決めており、当該組合との交渉案件については、事務職員で対応することとなったため、結果的に内田前常務理事は出席していなかったということであります」
──日大では約2万コマある授業数を数年かけて2割削減。非常勤講師を徐々に少なくし、さらに数年かけて非常勤講師をゼロにする「ゼロ化計画」を進めているというのは事実ですか。大学として、非常勤講師に対する今後の必要性はどのようにお考えですか。
「今後、非常勤講師をゼロにするといったことは一切考えておりません。専任教員だけで補えない部分は、従前どおり、非常勤講師の皆様の御助力を賜りたいと考えております」
(本誌・上田耕司)