<文科省調査>自殺の3割、学校把握できず 死亡原因など
毎日新聞 2018/11/23(金) 19:36配信
警察庁が2017年度までの4年間に自殺と判断した全国の小中高校の児童・生徒1337人のうち、3割にあたる395人について学校が死亡原因を把握できていなかったことが、文部科学省の調査で明らかになった。詳しい理由は不明だが、遺族が学校に「病死」や「事故死」と伝えるケースがあるとみられる。専門家は「遺族が学校に事実を連絡するのをためらっている場合もあるのではないか」と指摘している。
文科省が国公私立の小中高を対象に実施した問題行動・不登校調査によると、14〜17年度に自殺した児童・生徒は計942人。警察庁の統計より計395人少なく、1年あたり100人前後の差がある。
395人の内訳は高校生が240人で6割を占め、中学生は133人、小学生が22人だった。13年度以前は警察庁が年度単位で集計した数字がないため単純比較ができないが、文科省によると、警察庁の集計は以前から文科省より多いと推定されるという。
文科省などによると、警察は一般的に遺体の状況や遺書などから事件性がないと判断した場合、自殺であっても学校に連絡しないことがある。学校には捜査権がないため、死亡原因は遺族からの連絡に委ねているのが実情という。文科省担当者は、児童・生徒の自殺の実態を把握する必要があるとしながらも「自殺が疑われる事案でも、悲しむ遺族を追及するような行為はすべきでない。警察庁との差を埋める努力はしなければならないが、現実的には難しい」と話す。
自殺の動機は複合的な要因が絡んでいるとされ、17年度の問題行動・不登校調査で文科省が把握した250人のうち、6割弱の140人は不明となっている。判明した動機は「進路」33人、「家庭不和」31人、「いじめ」10人−−など。不明とされた事案には、学校の指導やサポートで防げた自殺が含まれていた可能性もある。
児童・生徒の自殺問題に詳しい新井肇・関西外国語大教授(生徒指導論)は「自分の子どもが自殺した場合、そっとしておいてほしいという思いを抱いたり、自責の念に駆られたりする遺族は少なくない」と報告をためらう心情に理解を示す。一方で「子どもの自殺を少しでも減らすためには、自殺予防教育を進め、学校と遺族が子どもの自殺の原因を一緒に考えるような環境づくりが必要だ」と指摘している。【伊澤拓也】