わいせつ誘拐の教頭、逮捕後も給与6割支給続く…懲戒手続き進まず「休職扱い」
読売新聞オンライン 2021/2/1(月) 10:02配信
10歳代の少女2人に対するわいせつ誘拐や逮捕監禁などの罪に問われた静岡県沼津市立中学校教頭(53)に対し、県教育委員会が懲戒処分の手続きに手間取っている。昨年10月の逮捕後に本人から事件に関する聴取など十分な調査ができなかったことが主因で、教頭は現在も休職扱いだ。
教頭は公判中で、昨年12月21日の初公判で起訴事実を認めた。起訴状によると、教頭は2017年8月、同県熱海市内で10歳代の少女をわいせつ目的で誘拐し、口にテープを貼り付けた上に手足をロープで縛るなどしたとされる。昨年9月には、沼津市内で10歳代の少女を同様の手口で監禁したとされる。教頭は昨年10月4日に静岡県警沼津署に逮捕され、その後、11月16日に再逮捕された。
静岡県教委によると、逮捕以降に県教委関係者などが事実確認のため逮捕後の教頭を訪ねた。教頭は辞意を示したものの、少女が性的な被害に遭う重大事件の捜査中だったこともあり、具体的な内容を聞き出せなかったという。
この事件では地検側が当初、被害者のプライバシー保護などを理由に起訴状をメディアに公表しなかった。情報が極めて少なく、懲戒処分に向けた検討も進められない状態だった。
県教委はこれらの理由から、懲戒免職処分を下すための十分な根拠を得られていない。今は「起訴休職処分」の状態で、給与は4割カットされているものの支給され続け、1月分の給与も支払われたという。教頭は公立中学校教諭という公務員だ。ただし、冬のボーナスはカットになった。
教頭が初公判で起訴事実を認めたことで、県教委側はようやく本人から事件について聴取できたとみられる。県教委は年度内に懲戒免職処分を下す考えだ。担当者は「事実関係の確認はなるべく早くしたい。本人がその行為を本当にしたのかもしっかり確認しなければならない」と話す。
不祥事の再発防止策に詳しい同志社大の太田肇教授(組織論)は「制度上、逮捕後も給与支払いが認められているのであれば仕方ない。ただ、公判で有罪になった場合に給与の返還を求める制度も必要だ」と話す。そのうえで、捜査当局との柔軟な情報共有の検討が有効であることを指摘した。
10歳代の少女2人に対するわいせつ誘拐や逮捕監禁などの罪に問われた静岡県富士市森島、沼津市立中学校の教頭山本英仁被告(53)の初公判が21日、静岡地裁沼津支部(菱田泰信裁判長)で開かれた。山本被告は罪状認否で「自分のやった行為で間違いありません」と認めた。
起訴状などによると、山本被告は9月28日、沼津市内で「荷物を持ってほしい」と10歳代の少女をレンタカーに誘い、身動きができないようにして山小屋へ連れて行き、わいせつな行為を無理やりしたとされる。2017年8月2日頃にも、熱海市内で別の10歳代少女に対する同様の事件を起こしたとされる。
検察側は冒頭陳述で、いずれの事件も少女を連れ去る際に両手両足をロープで縛って口に粘着テープを貼ったことや、携帯電話で動画を撮影し、泣いた少女に口止めをしたことなど、悪質性を指摘した。
さらに、沼津市内の事件では、レンタカーに偽造のナンバープレートを貼り付けて待ち伏せ、レンタカーを返却する間に自身が管理する山小屋のコンテナケースに少女を閉じ込めたとした。熱海市内の事件では、児童相談所で担当していた少女に、「お母さんの了解を取っている」などと言って車に誘い込んだことや、車内を目張りしていたことを明らかにした。
山本被告の弁護人も初公判で、「事実関係は争わない」と述べた。山本被告は公判中、目線を終始落としていた。
県教育委員会の木苗直秀教育長は山本被告が起訴事実を認めたことに対し、「被害に遭われた方々、保護者、県民に深くおわびする。このような事態が起こらないよう、教職員の綱紀の厳正保持に努める」とするコメントを出した。県教委は近く、山本被告への懲戒処分を出す方針だ。
沼津市の公立中学校の教頭の男が、9月下旬、10代の少女を車に乗せ監禁したとして、未成年者誘拐と監禁の疑いで警察に逮捕され た。
逮捕・送検されたのは、沼津市の公立中学校の教頭、山本英仁容疑者(53)。警察によると、山本容疑者は9月下旬、県東部に住む10代の少女を車に乗せて誘拐し、車内に監禁した疑いがもたれている。
事件は少女の親から「娘が帰ってこない」と通報があり発覚した。少女はその後、保護されけがはないという。
警察は事件の詳細について被害者保護の観点から発表していない。
沼津市教育委員会の奥村篤教育長は「山本容疑者が逮捕されたことは信じがたく極めて遺憾。早急に事実を確認し厳正に対応する」とコメントしている。