「学校注目させた家族」数々の嫌がらせ受け引っ越し…火使うトーチで大ヤケド 今も続く中学生と家族の苦しみ

「学校注目させた家族」数々の嫌がらせ受け引っ越し…火使うトーチで大ヤケド 今も続く中学生と家族の苦しみ
東海テレビ 2021/2/1(月) 17:43配信

 2019年7月、名古屋市の守山東中学校で、火を使うトーチの練習中に中学2年の男子生徒が大ヤケドをした事故。警察は業務上過失致傷の疑いで、53歳の男性教師を近く書類送検する方針を固めました。

 事故から1年半、男子生徒と両親の苦しみは今も続いています。

ヤケドをした生徒の父親:
「(今回の事故は)学校側で未然に防げたはずのヤケド事故でしたので、一人の生徒の心にも傷を負わせてしまったという事実を、重く受け止めてほしいと思っています」

 こう話すのは、30代の父親。中学2年の長男は事故で腕にヤケドを負ったほか、心にも大きな傷を負いました。

父親:
「一生残る傷になってしまったものですから。私たちの中では、もうあの時から時間が止まっている感覚ですね、ずっと…」

 事故があったのは2019年7月。名古屋市守山区の守山東中学校で、野外学習で披露する「ファイアトーチ」の練習中でした。

 男子生徒(当時13)の服に燃え移ったトーチの火…。上着の右腕部分が燃えて破れ、男子生徒は右腕に大ヤケドを負いました。その後、学校側から両親に信じられない説明が…。

学校側:
「『ちょっと練習した日数が少なくて、罰が当たっちゃったのかもしれんね。次からはミスなくやれる時は頑張ってやっていこうね』という形で言った罰というはあったような気もするんですけど。(Q.罰と言ったということ?)はい」

 現場責任者だった男性教師らから「罰が当たった」と男子生徒に発言。さらに、学校は教育委員会に事故の報告をしておらず、両親が去年3月、警察に刑事告訴していました。

父親:
「学校側の安全管理の部分は、マニュアルに照らし合わせてみた時も、バケツが非常に少なかったですし、灯油を絞ってもいなかったので、なによりも消火の対処方法として、足で何度も踏みつけるというのは未だに理解できません」

 警察はその後の捜査で、トーチの灯油が絞り切れていないことや、消火用のバケツの数が少なかったなど安全対策を怠ったと断定。業務上過失致傷の疑いで、指導していた53歳の男性教師を近く書類送検する方針を固めました。調べに対し、教師は容疑を認めています。

 これで捜査は一区切りとなるものの、家族の生活は一変しました。

父親:
「学校を悪い意味で注目させてしまった家族として、数々の嫌がらせを受けてしまったので」

母親:
「下の妹たちにも影響があって、全員が引きこもり状態になってしまって。精神的にも限界になって、引っ越すしかないかなと思い引っ越しましたね」

父親:
「同じような被害に遭うような子供を出さないということを考えると、声を出して正解だったなという風には考えています」

 家族は去年3月、県外に引っ越し、男子生徒は中学3年生になった今も、学校に行けない日々が続いています。

母親:
「当時のことを思い出してパニックになってしまったり、外に出るとなるとお腹が痛くなることもありますし、学校という名前を聞くと、手足が震えて動けなくなってしまったりとかするので、常に部屋に引きこもっている状態ですね」

父親:
「元々息子が憧れていた高校生活というのも、断念せざるを得ない状態に陥っています」

 立ち直るきっかけに、男子生徒はヤケドの痕を減らす手術を受けるといいます。

母親:
「一生残っていくんだろうなと思いながらも。ちょこっとでも気持ち的に、気分的に変わればいいかなと思っているんですけど」

父親:
「僕たちの中の区切りということで言わせていただくと、この事故がなかった状態に戻ること、起きる前の状態に戻ることですので、傷が完全に完治というのももちろんなんですけども、やっぱり一番は心の問題が落ち着かないと、僕らの中では解決という風にはならないと考えています。いけないことをしたら厳しい指導というのも必要だと思っていますし、何よりも今回の事故から、これからの子供たちのためにも、最低限の安全と安心は確保すべきだと思っています。それを求めたいです」

 今回の書類送検を受けて、市の教育委員会は「ヤケドを負った生徒の方には大変申し訳ない。今後は再発防止と信頼回復に努めて参りたい」とコメントしています。

 この事故をきっかけに、市は安全性の確保が困難だと判断し、市立の全ての小中高校で火を使ったトーチの使用を禁止し、ケミカルライトの使用を推奨しています。

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