「教育界はブラックボックス」 教員のわいせつ事案なくすには
毎日新聞 2021/3/27(土) 6:00配信
教員によるわいせつ事案が後を絶たない。どうすれば防げるのか。厳罰化や教育現場の意識改革を訴えているNPO法人「スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク」(大阪府守口市)の亀井明子代表に聞いた。【ガン・クリスティーナ】
――わいせつ行為などで処分を受けた教員は、2019年度は全国で273人で、過去2番目の多さだった。実際は統計より多いとの声があるが。
◆多いと思う。私たちのもとには、全国から年間約150件の相談がある。スクールセクハラに該当するのは、被害者が生徒、卒業生、実習生、自校の教職員の場合だ。1人しか被害を訴えていないからといって被害者が1人というわけではない。過去には、性被害が見過ごされ、次の転勤先で同じようにわいせつ行為をしたり、教員免許を偽って採用され、わいせつ行為を繰り返していたりした事例もある。
――隠蔽(いんぺい)されることもあると聞く。
◆被害者を出してしまうと、校長自身も処分を受ける。退職前であれば自分の経歴に傷がつくので、校長が教育委員会に事実を言わなかったり、疑いがある教員を処分せずに行動に気をつけるようにと注意で済ませたりすることがある。校長は保護者や子どもから相談があった場合は門前払いはできないので、わいせつ行為が疑われる教員から話を聞くが、まず否認される。証拠もなく、見た人もいない。校長は教員を守ろうとするので、先に進まない。
教委が第三者委員会を設置することになった場合でも、教委が事案の調査を担う委員を選ぶ際、校長の知り合いに依頼してそんたくが働いたり、打ち合わせをした上で調査が進められたりするケースもある。
――なぜ、そんなことが起こるのか。
◆わいせつ行為が疑われる教員がすごくまじめで保護者対応もきちんとできて、教え方も上手だったとすると、そんなことをするはずがないという思い込みもあるし、この教員がいなくなったら、また学校が荒れてしまうから失いたくない、などと「政治的な判断」をしてしまう。
教育界は特別な職場でブラックボックス。教育そのものを守ろうという意識が働いている。本来であれば被害者を守るため、被害者の立場で考え、教育のプロとして子どもの言い分をしっかり聞かなければならない。しかし、学校や教委関係者のよく知っている人が加害者になると、手加減をしてほしいという考えも出てくる。
――被害者側が相談できる公的な機関はないのか。
◆弁護士に依頼しても、疑われる教員が「指導のためにやった」「教育上のこととしてやった」などと主張し、事実を歪曲(わいきょく)したり、すり替えたりすると、それ以上立ち入れなくなってしまう。被害者にとって非常に不利な状態になっている。
――現状を改善するにはどうすればいいのか。
◆性暴力は人権侵害であり、子どもの教育権を剥奪するものだということを教委がきちんと認識し、性暴力が学校には存在するという事実を受け止めるべきだ。
政府は、わいせつ行為をした教員に二度と教員免許を与えず、子どものいる職場へ就職できないようにすべきだ。さらに、性被害の相談を受け付けるための第三者機関を教委が関与しない形で設置し、聞き取り調査は、隠蔽を防ぐため必ず複数人が同席し、手順を決めたうえで行う。学校で性被害の疑いがある事案が起きた場合、校長次第で対応が大きく変わるので、管理職向けの適切な対応方法などの研修が必要だ。