法廷で流れた虐待を収めた動画…子どもの泣き叫ぶ声 元園長虐待事件『イライラが抑えられなかった』
福島テレビ 2021/4/21(水) 19:53配信
福島県二本松市の認可保育所で起きた虐待事件。
濱尾敏子被告は、2020年 自身が園長を務めていた認可保育所で園児3人に対し、激しい揺さぶりや体を叩くなどの暴行を加えたとされている。
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4月21日に開かれた初公判。
【自分をバカにされているように感じてイライラが抑えられなかった】
起訴内容を認め、証言台でこう述べた濱尾被告。
検察側は「他の職員との溝や自分の思い通りにいかないストレスを暴力につなげた」と指摘。裁判長が暴力をふるった原因は何かと聞くと「暴力はいけないと分かっていたが、自分のやり方が正しいと思ってしまった」と述べた。
裁判は、5月12日に結審する。
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<裁判を傍聴した福島テレビ・阿部加奈子記者の報告>
4月21日の裁判では、法廷で虐待の一部始終が収められた動画を濱尾被告が確認する場面もありました。法廷内には5分以上にわたって、子どもの泣き叫ぶ声が響き濱尾被告は時折、映像から視線を外し目を伏せる場面もあった。
濱尾被告は、涙ながらに反省と謝罪の言葉を話すも、動機について聞かれると
Aくんに対しては「ずっと泣いていたので子どもで遊んでしまいました」
Bくんに対しては「担当の保育士が動かないことにイライラした」「B君の態度が自分をバカにしたように感じた」
Cちゃんには「自分の話を聞かせるために胸ぐらをつかんで揺さぶった」などと発言しました。
他人に責任を押し付ける自己弁護にも聞こえる発言や一部の虐待を否定するような発言もあり本当の意味での反省の態度には疑問が残りました。
濱尾容疑者が園長務めていた保育施設は2021年3月末に閉園し、通所していた児童は他の保育施設を利用しています。一方で、二本松市は県内でも多くの待機児童を抱える自治体の一つで、今後保育施設の増設などを支援していく考えです。
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<改めて子どもを安心して預けられる「保育の質」の確保も同時に求められる>
福島県・内堀雅雄知事:「市町村を通じ、県内の全保育施設に対する入所児童に対する虐待等が行われていないかについて職員全員で確認をし、疑いがある場合は速やかに関係機関に連絡相談するよう通知をしたところであります」
2020年12月。虐待が疑われる場合は、保育所などに事前通告なしの立ち入り調査を行うなど再発防止策を示した福島県。
しかし、虐待問題に詳しい専門家は健全な保育を守る為には【第三者の目】が欠かせないと指摘する。
福島学院大学 福祉学部こども学科・細川梢講師:「監査のように一年に1回という目では、それこそ見えなかったり隠せてしまったり。日常的に出入りをするそういう存在の人がいるのは重要かなと思います」
さらに、研修などを通し職員が自分自身の保育を見つめ直す機会も重要という。
福島学院大学 福祉学部こども学科・細川梢講師:「子どもの権利と保育士の倫理の再学習は、毎年毎年重ねて研修を行っていくということが、今回の事件を通してどの園でも取り入っていただきたいなと思っています」
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『学校法人まゆみ学園』は、福島県二本松市内で認定こども園などを経営し0歳児から5歳児まで約380人を預かっている。この学園が掲げるのが【こどもの主体性】を重んじた保育。職員全員に、保育に対する考えを共有するため年間で60回以上の研修を行っている。
学校法人まゆみ学園・古渡一秀理事長:「人として世の中を支えられる人間をどう作るか作っていけるかというのが問題だし、そのための保育をどうするかというのが大きなテーマだろうと思っています。だからこそ各施設の質の向上は、もっと必要」
その一方、行政が主導で行う子どもの人権や保育について学ぶ研修会などはなく、県全体で「保育の質」を高めていく必要があると考えている。
学校法人まゆみ学園・古渡一秀理事長:「やはり僕は子ども主体の保育・教育がどうあるべきかというのも行政も考えてほしい部分があるし、そういう所を今後明確にして必要があるんだろうと思っています」
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待機児童の解消に向け施設の増設と整備はもちろん大切だが、子どもたちひとり一人の成長を見守る「保育の質」も重要。福島県内全ての保育施設で、行政と現場が一体となった取り組みが求められている。