聚楽保育所、京都市が突如の廃止方針 保護者らが反発強める

聚楽保育所、京都市が突如の廃止方針 保護者らが反発強める
毎日新聞 2021/5/20(木) 18:39配信

 京都市が市立聚楽(じゅらく)保育所(同市中京区)を廃止する方針を突如打ち出したことに、保護者らが反発を強めている。同保育所を巡っては、当初予定されていた民間移管が白紙になり、市が今春から大半の新規入所募集を停止するなど、混乱が続いていた。「市の将来に直結する子育ての環境を、もっと大事にしてほしい」。保護者らの切なる願いだ。

 同保育所について市は当初、2022年度からの民営化を目指していたが、移管先として予定していた民間事業者が20年10月に辞退して白紙に。これを受けて市は同12月、1、3歳児以外の新規入所について、21年4月以降の募集を停止した。0歳児の保護者が入所を求めて市を提訴したり、保護者らが募集の再開を求める署名を市に提出したりしてきたが、市は5月市議会に突如、同保育所を26年度末で廃止する条例案を提出した。

 ◇保護者会「子育て拠点として存続検討を」

 「市は、私たちと丁寧に対話してほしい」。同保育所に長女(1)と長男(4)を通わせる山口茜さん(44)=同市上京区=が訴える。長女は20年度に入所したが、その後に0歳児の募集停止が発表されたこともあり、同学年は長女のみ。今は1学年上と一緒に過ごすが、廃止が決まって新規の入所募集が再開されなければ、年上の子どもたちの卒園後は長女1人になってしまう可能性がある。

 市は近隣の保育所の子どもとの共同保育を検討しているというが、具体的には決まっていない。山口さんは「他の子どもと交流する機会が大きく失われてしまう。子どもに申し訳ない」と話す。

 5月18日には、同保育所を利用する保護者会が、慎重な審議などを求める陳情書を市議会に提出した。陳情書では、どんな子どもでも受け入れる、セーフティーネットとしての市営保育所の重要性などを強調し、条例を審議する前には保護者や地元の住民との話し合いの場を設けるよう要請。「廃止ありきではなく、地域の子育て拠点として存続を含めて検討されるべきだ」と訴えている。

 市によると、保育が必要と認定した子どもの数は4月1日現在で3万938人。うち3万682人が保育所などを利用できているほか、幼稚園での預かり保育などを含めると、8年連続で待機児童ゼロを達成したとしている。ただ、特定の施設を希望しているなどの理由で利用していない子どもなどの「潜在的待機児童」も398人いる。

 市は聚楽保育所を廃止する理由について「規模の縮小も含めて検討したが、保育需要は周辺の保育施設で満たせる」と説明している。【添島香苗】

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