わいせつ教員に免許制限 厚労省は今後保育士も検討へ
福祉新聞 2021/6/11(金) 10:03配信
幼児、児童、生徒へのわいせつ行為で懲戒免職になった教員が再び免許を取得することの制限を柱とした新法が5月28日、参議院本会議で全会一致で可決され成立した。免許の再交付を都道府県教育委員会の判断で拒めるようにする。現行制度では、免許を失っても3年たてば再取得できる。そのため、再び被害者が出る例もあり、再取得の制限強化が検討課題となっていた。施行は公布日から1年以内。
幼稚園、認定こども園、特別支援学校で働く教員も対象となる。衆参の文部科学委員会は、保育士についても同様の仕組みを設けるよう政府に求めた。厚生労働省は5月26日に発足した検討会で、この問題を議論する。
また、保育所や学校で働こうとする人に対し、性犯罪歴がないことを示す「無犯罪証明書」を事業者に提出するよう求めることも政府の検討課題とした。
今後、認定こども園や保育所を運営する社会福祉法人に影響が及ぶのは必至だ。
新法の名称は「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」。馳浩・元文科大臣らが起草した議員立法として、左藤章・衆議院文科委員長が5月21日に提出していた。
対象となる性暴力の範囲は強制性交や児童買春周旋のほか、下着姿や裸を撮影する目的でカメラを設置すること、性的羞恥心を害する言動をすることなど幅広い。
新法はこうした行為を防止するための基本方針を文科大臣が定めることを規定。免許を失効した教員について、教育委員会が再交付の可否を判断する際の基準もつくる。
幼稚園や認定こども園を含む「学校」は、教員による性暴力の早期発見のため、子どもや教員を定期調査することが義務になる。被害を受けた子どもとその保護者の支援も義務付けられた。
国は免許を失った教員の氏名や失効の理由などの情報を記録したデータベースを整備する。新法は、学校で子どもに接する仕事に就く人の資格や照会制度の在り方を検討するよう付則に規定した。
文科省によると、2019年度にわいせつ行為で処分された公立小中高校の教員は174人。そのうち、自校の児童生徒を含む18歳未満への行為で処分されたのは126人だった=グラフ参照。
一方、児童へのわいせつ行為で登録を取り消された保育士の数は不明。禁固刑などを終えた保育士でも2年後に再び登録できる仕組みになっている。