校長除く全教職員が授業取りやめストライキ…和歌山の私立高校、4月分給与未払いで
読売新聞オンライン 2022/5/12(木) 7:10配信
学校法人南陵学園(静岡県)が運営する私立和歌山南陵高校(和歌山県日高川町)で、校長を除く全教職員23人が、4月分の給与が支払われていないことなどを理由に11日の授業を取りやめた。教職員によるストライキは異例。教職員側は法人側に説明会の開催を求めているが、時期は固まっておらず、対立解消の見通しは立っていない。
関係者によると、学校法人は23人の4月分給与を所定の4月28日に支払わず、5月9日付で御坊労働基準監督署から20日までに支払うよう是正勧告を受けたという。
この高校では4月、各家庭が高校に支払う授業料を国が補助する「就学支援金」を法人側が受け取ったにもかかわらず、本来保護者に返すべき授業料計2000万円を支払っていないことが明らかになり、和歌山県が早急に還付するよう指導。法人側は4月末までに一部を還付し、残りは5月分の授業料などから差し引くと保護者側に伝えていた。
教職員側は、保護者への還付遅れや給与の未払いについて、保護者や教職員向けの説明会を開くよう法人側に繰り返し要求し、10日には校長を兼務する小野和利理事長に文書で求めた。小野理事長は同日に電話で教職員向けの説明会を13日に実施すると伝えてきたが、保護者向けは明確な日程が決まらず、教職員側はストに踏み切ったという。
学校では11日午前に全校集会が開かれ、教職員側が生徒に事情を説明し、謝罪した。生徒からは「テストが近いのに」との声も上がったという。教職員が見守る中、生徒は昼過ぎまで教室で自習し、午後からは部活動に取り組んだ。
ある男子生徒の父親は「息子はこれまで学校生活を楽しんできたのに、卒業できるのか不安になる」と困惑し、「子どもたちが普通の学校生活を送れるようにしてほしい」と話した。
対立の背景には、学校の経営難があるとみられる。普通科の各学年の定員は120人、3学年で計360人だが、167人しかいない。9日にはガス料金の未払いで、学校へのガス供給が停止された。その後支払われ、翌10日に供給が再開されたという。
県は11日、学校側からの連絡で事態を把握。担当者は「生徒の学びに支障が出ることはあってはならない」とし、教職員側に授業を行うよう求めた。教職員側は、12日は授業を行う方向で検討している。
小野理事長は読売新聞の取材に対し「後日、報道各社に一律の回答をさせていただきますので、現時点では回答を差し控えます」とのコメントを出した。
県などによると、学校は休校となっていた別の私立学校を南陵学園が引き継ぐ形で2016年4月に開校した。普通科のほか、通信制もある。
文科省担当者「何が起きているのか」
「これほど大規模な教職員のストライキは聞いたことがない」。関西で勤務する教職員が所属する「大阪教育合同労働組合」の関係者は、今回の事態に驚く。
私立学校の教職員は公務員とは異なり、ストライキを行う権利が制約されていない。ただ、実際にストに至るまでには、団体交渉の要求などの手続きを踏むのが一般的だ。この関係者は「詳しい経緯はわからないが、生徒の学びへの配慮がどこまであったのか」と疑問を呈する。
一方、北海道大の佐々木隆生・名誉教授(教育制度)は「教員はいくら聖職だといっても無給で働くわけにはいかず、ストライキはやむを得ない手段だったのだろう」と教職員側の対応に理解を示しつつ、「法人側は4月に給与を払えないことは前年度のうちに予想がついていたはずで、その時点で生徒募集を停止したり、保護者や教職員と話し合ったりするべきだった」と批判する。
私立高校の教職員の給与は、生徒の授業料と生徒数に応じて各都道府県が出す私学助成金から支給される。文部科学省の担当者は「学校は収入に見合う人員配置をしているはず。何が起きているのか」と注視する。
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以下、当ブログ内の過去の南陵学園関連記事
菊川南陵高校をめぐる補助金の不正流用疑惑で、不正を告発した校長が解雇されることがわかりました。
菊川南陵高校をめぐっては学園長ら夫妻が、学校運営のための補助金を夫妻が経営する会社に不正に流用したとして先月、後藤雅典校長が刑事告発していました。
後藤校長によりますときのう、学校の事務職員から「解雇通知を投函する」と電話があったということです。
学校関係者によりますと、18日に評議員会と理事会が開かれ、内部資料を持ち出すなどの行為により学校の信用を失墜させたとして、後藤校長の解雇が決議されたということです。
菊川南陵高(菊川市)の後藤雅典校長は11日、同校を運営する学校法人南陵学園(同)の理事長と学園長が静岡県の補助金約1900万円を不正に流用したとして、背任と補助金適正化法違反容疑の告発状を県警に提出した。
関係者によると、2人は2017年、私立学校の運営などに関する県の補助金約1900万円を学園の口座から引き出し、2人が経営する焼津市の産業廃棄物処理会社の口座に振り込んだとされる。学園の理事会などの承認は得ていないという。後藤校長は取材に対し「学校を守るため、職員を代表して校長の私がやらなければならない」と話した。
■「確認した上で必要な対応」 県私学振興課
県私学振興課によると、菊川南陵高には2017年度、人件費や教育研究費などに充てるための私立学校経常費補助金約9千万円を年4回に分けて支出し、12月には1930万円を入金した。毎年8〜11月に各校を訪ねて補助金の適切な執行を調査しているが、同校を調査した際に不正は確認できなかったという。同課は「告発状を確認した上で必要な対応をとる。所管庁として生徒に影響がないように学校管理者を指導する」と話した。
校内に産廃営業所 補助金流用告発の校長会見 静岡
@S[アットエス] by 静岡新聞SBS 2018/10/12(金) 8:21配信
菊川南陵高(菊川市)を運営する学校法人南陵学園の理事長と学園長が県の補助金約1900万円を不正流用したとされる問題で、2人を背任容疑で県警に告発した後藤雅典校長が11日、静岡県庁で記者会見し、2人が経営する産業廃棄物処理会社(焼津市)が同校の事務室の一画に営業所を構えていることを明らかにした。
後藤校長によると、2016年6月ごろに突然、事務室に机などが搬入され、産廃処理会社の職員が常勤するようになったという。同社ホームページでは「菊川営業所」の所在地が学校と同じ住所になっている。後藤校長は「学校法人を私物化する極めて異常な事態」と批判した。
産廃処理会社は取材に「担当者が不在でコメントできない」、学園側も「理事長や学園長と連絡が取れない」とした。
県私学振興課は「目的や活動内容など実態を把握した上で、学校運営に支障を来していれば何らかの対策を講じる」と話した。
告発状によると、16年1月以降、計2億円超が学園の口座から引き出され、同社に貸し付けられていた。うち約2800万円は未返済という。2人は夫婦で、妻が理事長、夫が学園長を務める。
■朝から全校集会 学校関係者動揺
菊川南陵高(菊川市河東)の後藤雅典校長が11日、運営する学校法人の学園長らを告発した。突然の出来事に同校は朝から全校集会を開いて生徒に状況を説明し、授業は中止。一方、複数の学校関係者は運営法人と現場の関係のゆがみを吐露した。
関係者らによると、7年ほど前に前身の国際開洋学園が多額の負債を抱え、閉校が取りざたされた際、現学園長らは存続のために資金援助をし、運営を引き継いだという。学園長らは特にスポーツを通じた指導を強化し、一時は入学者が100人を超えるなど手腕に評価を得ていた。
一方で、自身の会社の社員を校内で働かせるなどしていた。学校関係者は「混同では、と疑問を抱いていた」と言う。別の関係者は「教職員への指導が厳しく、短期間で辞めてしまう人も多かった」と話した。