熊本市の私立高でいじめ不登校 欠席日数「重大事態」の目安超過 県が複数回助言も認定せず

熊本市の私立高でいじめ不登校 欠席日数「重大事態」の目安超過 県が複数回助言も認定せず
熊本日日新聞 2023/11/23(木) 18:03配信

 熊本市の私立高で、運動部の上級生から暴行や暴言を受けた男子生徒が昨年6月に不登校となり、欠席日数が、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と認定すべき国の基準を超えているにもかかわらず、高校が認定していないことが23日、分かった。県は重大事態として認識するよう複数回助言したが、高校は「生徒の学校生活への復帰や、学習サポートを優先したい」などとして応じていない。

 国の指針は、いじめの疑いで年間30日以上欠席した場合を重大事態と認定する目安としている。生徒は昨年6〜9月に40日程度欠席。その後は別室登校を続け、通常の学校生活に戻ることができていない。今年4月には「トラウマ反応(PTSD様の諸症状)」との診断を受け、現在も通院している。

 高校や生徒の保護者によると、生徒は昨年度、所属する運動部の複数の上級生から肩を殴られたり、「死ね」などの暴言を受けたりした。外部からの通報などを受けた高校は部内を調査し、暴行や暴言を確認。上級生を停学などの処分にした。

 生徒側は今年2月、重大事態と判断するよう学校に求めたが、現在まで認定していない。熊日の取材に教頭は「法や指針への認識が足りていなかった」とした上で、「現状の改善が必要とする顧問弁護士の助言に従った。過去ではなく、今後に力を尽くしたい」と説明した。

 高校から報告を受けた県は今春以降、重大事態と認識し、組織的に対応することなどを促してきた。県私学振興課は「重大事態に該当すると認識しているが、私学のいじめ対応について県は助言する以上の権限がない。適切に対応するよう助言を繰り返したい」としている。

 高校は、原因究明や再発防止を求める生徒側の意向を踏まえ、第三者調査委員会を設置する方針。重大事態と認定しないまま、第三者による調査を始めるのは極めて異例とみられる。生徒の父親は「上級生を処分するほどの状況にもかかわらず、重大事態と認めないのはあきれる。被害を軽く見ていて、寄り添う姿勢が全くない」と話している。(臼杵大介、後藤幸樹)

 ◆「学校の対応あり得ない」 千葉大教育学部・藤川大祐教授

 運動部内でいじめが起きた熊本市の私立高の対応について、千葉大教育学部の藤川大祐教授(教育方法学)に聞いた。(後藤幸樹)

 −いじめを受けた生徒の欠席日数は40日程度に上っていますが、学校は重大事態と認定していません。

 「いじめ防止対策推進法で要件とする『相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている』ことは明らかだ。国の指針が目安として定義する30日に達した時点で学校は重大事態と認識し、保護者と連絡を取り合って対応を検討すべきだった。法令に従っていないと言わざるを得ず、あり得ない対応だ」

 −学校は顧問弁護士の助言に従い、重大事態に認定しないまま第三者委員会での調査を準備しています。

 「学校が自分たちの都合の良いように解釈して判断したとすれば大きな誤り。法律にのっとっていない第三者委員会で、被害生徒や保護者が納得する調査ができるのか、不透明だ」

 「被害生徒や保護者が求めるのであれば、重大事態に認定すべきだ。いじめで苦しみ、学校の対応にも不信感を募らせる『二重の苦しみ』を与えることは決して許されない」

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