過剰指導の悲劇 大阪・高2自殺 体罰指導「プロではない」

過剰指導の悲劇 大阪・高2自殺 体罰指導「プロではない」
産経新聞 2013年1月13日(日)11時17分配信

 昨年のクリスマスイブの夜。やりきれない思いに、参列者が胸を詰まらせた。

 前日、首をつって自殺した大阪市立桜(さくらの)宮(みや)高校のバスケットボール部主将だった2年男子生徒の通夜。生徒は自殺前日も練習試合で顧問の男性教諭(47)から激しく叱責され、何度もたたかれた。

 「顔を見てやってください」。母親に促され、顧問が近づくと、口のはれた生徒の物言わぬ姿があった。「これは指導ですか、体罰ですか」。泣きはらした母親から問いかけられた顧問は、「体罰です」と力なく頭を下げた。

 上級生が引退し、新チームに引き継がれた昨年9月、生徒は立候補して主将となった。だが、顧問は主将に特に厳しく当たり、何度も体罰を加えた。「同じようなミスをしても、主将だからよりきつく怒られる」。生徒が残した手紙にはそうつづられていた。

 「(主将を続けるのが)とてもしんどい」。練習試合の後、意を決して打ち明けた生徒に、顧問は「それじゃ、2軍でもいいんやな」と言葉を返した。「また明日から頑張ります」。そう答えた生徒が深い絶望のふちに立たされたであろうことは想像に難くない。

 全国大会常連の同部。強豪校の門をたたいた生徒の大志は、最悪の形で打ち砕かれた。

 「息子がいた当時の高校によく似ている」。前橋市の金沢けい子さん(56)はいう。東京農大二高のラグビー部員だった長男の昌輝さん=当時(17)=は3年進級前の平成14年3月、理不尽ともいえる指導に耐えかね、自ら命を絶った。

 同部は全国大会準優勝の経験もある強豪。昌輝さんは1年の時から頭角を現したが、当時の監督やコーチから「使えない」といった暴言や殴る蹴るの暴力をたびたび受けた。

 昌輝さんは過呼吸を発症。けい子さんは部側に春合宿の不参加を伝えたが、参加を催促する電話があった。昌輝さんが自殺したのは、その直後だった。

 強豪校の重圧、繰り返される体罰、断たれる退路。自殺した桜宮高の生徒は、昌輝さんと同じような思いを抱いたのかもしれない。

 けい子さんは「暴力や暴言の指導は生徒を精神的に傷つけ、追い詰める。特にまじめな子は傷が深いんです」と訴える。

 桜宮高の生徒も責任感が強いタイプだった。青少年心理に詳しい六甲カウンセリング研究所(兵庫県西宮市)の井上敏明所長は、顧問の行動を「指導ではなくいじめだ」と断じる。

 また、関西大の黒田勇教授(スポーツ社会学)は「暴力は教育の失敗。たたく指導者は未熟だし、プロではない。体罰に愛情があればいいというのは幻想だ」と指弾する。

 一方で、顧問には「熱血指導者」との評判もあった。卒業生の一部には処分の軽減を求める動きもあるが、生徒が死を選ばざるを得なかった結果は、あまりに重い。

 けい子さんはこう話す。「息子の死から10年たっても、暴力はなくなっていないのかと。悲しみが大きすぎて言葉になりません」

 社会的に大きな衝撃を与えた桜宮高生徒の自殺。現場での指導の在り方、教育行政を含め、浮かび上がった問題点を見つめる。

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