破綻の道程:堀越学園解散/1 「回避できなかったか」 拡大路線で財務悪化 /群馬
毎日新聞 2013年3月29日(金)14時13分配信
◇法令違反改善されず、文科省「強制、残念で遺憾」
学校法人堀越学園(高崎市、福田星人理事長)が、文部科学省から28日、解散を命じられた。経営悪化が表面化した09年1月から4年2カ月、「回避の道を、なぜとれなかったのか」。学生や教職員はこの日、学校が消える重さをかみしめた。【増田勝彦】
午後4時15分、東京・霞が関の文部科学省記者会見室。私学部の牛尾則文参事官が「昨年10月28日の大学設置・学校法人審議会の答申から、学生の転学等も進み、ほぼ進路が決まった。指摘された法令違反は改善されていない。先ほど理事長を呼んで、解散命令の通知書を渡した」と切り出した。
解散命令により、運営していた創造学園大と2専門学校、2幼稚園は廃止される。学籍簿について、大学は文科省が、専門学校、幼稚園は県が、学園から引き継ぎ、証明書の発行などをしていく。
牛尾参事官は「自ら問題点を改善を図り、存続が難しければ自ら学校を閉じ、法人を解散するのが本来の姿。強制的な形でしか解散にならなかったことは、たいへん残念で、遺憾」と学園の対応を批判した。
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10年に開設された同大倉敷校(岡山県)については、カイロプラクティック施術を学ぶ「姿勢科学コース」に1年生24人、2年生370人の在籍者がいるが、1年次は年12回の授業が行われるのみで、民間資格の「姿勢科学士」を取得。同校は2年次以降のカリキュラムは用意されておらず、2年生全員は最大で2年間の休学となっていることを明らかにし、「大学ではない。特殊なプログラムに通っていると考えている」と切り捨てた。
文科省によると、同大高崎本校は86人のうち49人が卒業、13人が他大学や専門学校に転学、24人が就職などの道を選んだ。中国、韓国などからの留学生が多い同東京校は77人のうち5人が卒業、38人が転学したが、31人が就職・帰国した。3人が未確定という。
専門学校2校では2人が就職、33人が転学。2幼稚園も希望者87人の転園先が決まった。
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学生と保護者で結成され、学園に説明会の開催などを求めてきた「(堀越学園)あしたの会」は「結果がわかっていたが、改めて学校がなくなることの重さを感じる。年度途中の破綻も心配したが、卒業(園)式ができ、転学先も決まった。給料が支払われない中で授業を続けた先生方に感謝の気持ちでいっぱいです」とのコメントを出した。
◇給与も未払い、国が立て替え−−教職員
堀越学園の教職員はほとんど再就職先が決まらず、最長、11年9月から1年7カ月の給与が未払いになっている。未払い給与と退職金の一部は国の「未払賃金立替払制度」により、最高296万円立替払いされる。
同制度は、経営破綻により賃金が支払われないまま退職した労働者に、未払い賃金の一定範囲を労働者健康福祉機構が使用者に代わって支払うもの。退職前6カ月の未払い給与と退職金の8割が、296万円(45歳以上)から88万円(30歳未満)を上限に支払われる。
立替した同機構は、本来の支払い責任者である使用者に求償する。
◇拡大路線で財務悪化 資産、一時47億円
学校法人堀越学園(高崎市)は、「堀越幼稚園」を開園した堀越久良、嶋子夫妻が、幼稚園教諭の養成学校を作ろうと、1966(昭和41)年9月に設立された。68年4月に高崎保育専門学校を開校し、県内で初めて幼稚園教諭資格が取得できるとあって人気を呼んだという。80年に子供の国幼稚園が開園、81年に高崎短大(後に高崎芸術短大)、92年には高崎福祉専門学校が開校した。前橋地方法務局に登記された「資産の総額」も02年度末には47億円余に達した。
04年に短大と高崎福祉専門学校を母体に創造学園大を開学させたが、初年度から創造芸術学部の音楽学科が、2年目からは全学部・学科が定員割れになった。さらに06年開校の高崎医療技術福祉専門学校にも施設整備に多額の資金を投入して財務状況が悪化。08年度末の資産総額は6年で半分になった。また09年1月に給与遅配が表面化してからは、各学校への入学者が激減した。
学園理事長は久良氏が06年6月に死去すると、養子となっていた堀越哲二元理事長に引き継がれた。11年1月、堀越元理事長は経営悪化の責任を取り理事長を辞任した。創造学園大学長・理事にとどまり、経営を主導し続けた。同年7月、県警が横領容疑で学生寮を家宅捜索すると、学長職の辞任を表明したが、後任が選ばれないまま辞意は撤回された。
同大教員などから堀越元理事長の退陣を求める声が強まり、12年1月に理事会は堀越元理事長ら3人を解任。米キリスト教団からの支援を表明する大島孝夫氏が理事長に就任した。
堀越元理事長らは理事会の招集手続きに不備があるとして地位保全の仮処分を申し立て、認められた。二つの理事会ができた形となり、同大は学内混乱を懸念して一時閉鎖。二つの理事会は、それぞれ人事や処分を発令して、事態は混乱を極めた。12年10月の解散命令の聴聞にも、双方が出席する異例の事態が続き、大学設置・学校法人審議会は同月、文部科学相に対して12年度中の解散命令を答申した。【増田勝彦】
◇解散理由、5点の法令違反 運営資金、財産が欠如
文部科学省は、07年度以降、学校法人堀越学園に対して、財務状況など運営上のさまざまな問題を指摘、再三指導してきたが、改善されることはなかった。同省は法人解散を命じる理由として5点の法令違反をあげている。
一番大きなものは、私立学校法で定められた「学校運営のための資金、必要な財産」がないことだ。同学園では給与遅配や未払いが常態化、水道光熱費の支払いも滞るなど、現預金は底を突き、校地や校舎などほとんどの不動産に抵当権が設定されている。同省は、10億円の不動産評価額に対し、負債は約45億円とみている。
また、収支計算書や財産目録などの決算書類、事業報告書を作成し、在校生など利害関係人に閲覧させるよう義務づけられいるが、11年度の決算書類などを作成していない。今年3月1日付で同年度の決算書類が文科省に提出されたが、監事の監査報告書、計算の根拠となる資料がなく、学園は「前年度決算からの推測」と説明したという。文科省は「適正な決算書類とはいえない」と判断している。
年度末現在の「資産の総額」を登記することも義務づけられているが、10年度以降行われておらず、欠員の監事も補充されなかった。
さらに、教職員に対しする給与も遅配が続き、最も長い人は11年9月以降、1年7カ月間給与が未払いとなっている。【増田勝彦】
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◇堀越学園の経過◇
1966年 4月 堀越幼稚園を開園
66年 9月 学校法人堀越学園設立。堀越久良氏が初代理事長に
68年 4月 高崎保育専門学校開校
77年11月 堀越哲二元理事長が理事就任
80年 4月 子供の国幼稚園開園
81年 4月 音楽単科の高崎短大開校
88年 4月 美術科を加え高崎芸術短大と改称
92年 4月 高崎福祉専門学校開校
2002年11月 堀越元理事長が久良夫妻と養子縁組
04年 4月 創造学園大開学
06年 4月 高崎医療技術福祉専門学校開校
6月 久良氏が死去、堀越哲二理事長に
09年 1月 7回目の給与遅配、経営悪化が表面化
3月 大学設置申請時の決算虚偽報告が発覚
11月 酒井法子さんの創造学園大入学発表
10年10月 決算虚偽報告で文科省が処分
11年 1月 堀越元理事長が理事長辞任
2月 不動産の抵当権が整理回収機構へ譲渡
3月 認証評価機関が大学基準不認定を発表
7月 横領容疑で県警が学生寮を家宅捜索
12月 文科省が学校法人運営調査実施
12年 1月 堀越元理事長の学長・理事などの解任を理事会が決議
5月 堀越理事長の地位保全認める仮処分決定
6月 文科省参事官が、緊急現地視察
10月 文科省審議会が解散命令を答申
11月 県警が横領容疑で堀越元理事長を逮捕
13年 1月 本訴で堀越理事長の解任無効判決
2月 堀越元理事長に懲役2年6月の1審判決堀越元理事長が東京高裁に控訴
3月 文科省が堀越学園に法人解散命令
3月29日朝刊