京都府立医大元教授、論文捏造疑い 臨床試験承認申請めぐり

京都府立医大元教授、論文捏造疑い 臨床試験承認申請めぐり
産経新聞 2013年4月11日(木)12時10分配信

 京都府立医大(京都市)の元教授らのチームが平成16年、急性心筋梗塞の患者に本人の細胞を移植する臨床試験を行うにあたって承認を申請した際、提出した論文に捏造(ねつぞう)の疑いがあることが11日、大学への取材で分かった。松原元教授は今年2月に大学を辞職。大学の検証チームが調査を進めている。

 大学側によると、松原元教授らは16年2月、急性心筋梗塞になった男性患者の冠動脈に、本人の血液から採取した幹細胞を注入して血管を再生させる世界初の臨床試験を行ったと発表。この前年、臨床試験を大学の倫理委員会に申請した際に参考として提出した論文で、内容に捏造の疑いが持たれているという。

 同大学の伏木信次副学長は11日に会見し、捏造の疑いがあることは認めたが、具体的内容は明らかにしなかった。また事前に安全性を確認する動物実験を行っていなかったことを問題視している一部の報道に触れ、「当時すでに海外で類似した治療が行われており、そうした先進事例を参考にして承認された。医療倫理上の問題はないと考えている」と説明。「捏造された疑いのある論文も承認の根拠にはなっていない」と述べ、申請にあたって虚偽の説明はなかった−と述べた。

 同大学は23年、外部から「不正行為がある」との指摘を受けて調査を開始。同大学は、松原元教授がかかわった別の論文データの誤りについて、「故意の捏造ではない」と結論づけていたが、論文を掲載した日本循環器学会から再調査を求められており、検証チームを設置して調べている。

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14論文で捏造や改ざん 府立医大元教授
京都新聞 2013年4月11日(木)23時9分配信

 京都府立医科大の元教授の論文不正疑惑問題で、府立医大は11日、調査委員会の報告書を公表した。14論文計52カ所で画像の加工や流用などを認め、捏造(ねつぞう)、改ざんと断じた。臨床研究の申請資料となった論文も含まれている。大学は今後、処分を検討する。
 松原弘明元教授(56)が共著者として発表した論文に「不正がある」との指摘を外部から受け、2011年12月に調査委員会を設置した。
 報告書によると、捏造と改ざんの疑いで2001年〜11年に発表された血管再生などに関する16論文を調査。うち14論文で、同一とみられる画像を流用したり、加工して別の画像と見せかける捏造や改ざんが行われていたと判断した。
 2002年に米学会誌に発表した、慢性心筋梗塞のブタに血管の幹細胞を投与した実験の論文で、以前の論文に掲載した血管断面画像を上下に反転、さらに切り貼りを行って血管が増えているように捏造したと指摘した。この論文は2004年から実施した急性心筋梗塞の患者に幹細胞を移植して血管を再生する臨床研究の実施申請資料となっており、「医療倫理上重大な問題が内在している可能性がある」としている。
 結論として松原元教授について、「研究倫理が欠如」「指導監督体制に本質的な欠陥」「多数の疑惑論文と研究の最終的な責任者として責任は極めて重い」としている。
 委員長を務めた副学長の木下茂教授は「捏造を認識できなかったことは大学に責任がある。不正防止の指導を徹底し、信頼回復に努めたい」と述べた。
 松原元教授は同日、弁護士を通じて「私が画像などを捏造したり、捏造を指示したことはない。報告書は、不正に関与した者や役割を認定しておらず、不正行為があったと結論づけることはできない。私に対する事実誤認が行われたことは残念」と文書で反論した。

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