「公平ないじめ調査委」は“ウソ” 中1女子自殺で橿原市教委は「訴訟を想定」

「公平ないじめ調査委」は“ウソ” 中1女子自殺で橿原市教委は「訴訟を想定」
産経新聞 2013年10月12日(土)10時31分配信

 国の「いじめ防止基本方針」が11日、策定された。自殺など重大事態が起きた場合、専門知識のある第三者を入れることなど調査組織のあり方が示されたが、学校現場でうまく機能するのか。今年3月に起きた奈良県橿原市の中1女子自殺問題では、第三者調査委員会の公平・中立性をめぐり市教育委員会の対応が批判され、市側が委嘱した元委員までが「市側は訴訟を想定していた」と暴露する事態に発展した。関係者から「いじめの専門家養成が先」との声も出ている。

 「全員『解任』という形で終わったことは無念でならない」

 橿原市教委が7月に委嘱した委員長を含めた第三者調査委の元委員3人は7日、連名で市教委あてに文書を送付。その中で市教委側が主導した第三者委のあり方を厳しく批判した。

 この問題では、市教育長が6月、「いじめと自殺の因果関係は低い」と発言。遺族が猛反発し、「予断を持った市教委の下では公正な調査は望めない」として、市長部局下での調査委設置と、委員の半数を遺族推薦に基づいて選ぶことを要望した。

 ところが、市側は6月末に成立したいじめ防止対策推進法に「想定、規定されていない」と拒否。7月に、市教委の下に、元委員3人に加え、6月末まで市の顧問弁護士だった人物を委員に委嘱した。

 市側は遺族に「中立・公正な調査委を作る」と大見得を切っていたが、元委員3人は文書で「委員会発足前より、訴訟を想定した体制に入っていた」と、市側の“ウソ”を暴露。「委員会も元顧問弁護士主導で進んでいくことが初回委員会で分かり、このままでは遺族や社会の理解を得られず、中立・公正な調査は行えないと共通理解した」とし、元顧問弁護士に辞任を促したとした。元顧問弁護士は自発的に辞任した形になっていたが、元委員3人は「辞任なき場合は、われわれ3人が総辞職する決意だった」と明かしている。

 その後、全校アンケートに40件以上のいじめ証言があったことが発覚するなど批判の高まりを受け、市側は一転して遺族に謝罪し、元委員3人を9月に解任。現在、遺族と協議しながら新たな委員の選定作業を行っている。自殺した女子生徒の父親(48)は「訴訟ありきの第三者委だったことが分かり、市側の不誠実な対応に改めて憤りを感じる。今後、われわれのような思いをすることが二度とないようにしてもらいたい」と訴える。

 元委員3人は調査組織の課題として、(1)調査委員の公平・中立性(2)調査組織の独立性(3)調査組織の透明性−を列挙。その上で「遺族の協力なしには調査はなしえず、そのために、遺族の気持ちを尊重し、不信感や不安を与えないよう委員の選定や調査についても協議しつつ進めていくことが不可欠」と指摘している。

 ■「いじめ問題の専門家養成を」

 11日に策定された国の「いじめ防止基本方針」では、重大事態の場合の調査組織の構成について、いじめ事案の利害関係者を排除するよう明記した。これにより、橿原市のように直前まで市の顧問弁護士を務めていたような人物が選任されることはなくなる。

 さらに、弁護士や医師ら専門知識のある第三者をメンバーに入れることを促した。しかし、いじめ自殺で高校1年の一人娘を失い、10年以上、いじめ防止の活動に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」理事の小森美登里さん(56)は「専門知識のある弁護士や医者といっても、どこまでいじめ問題を理解しているのか疑問。まずは国が中心となって、本当の意味でのいじめ問題の専門家を養成することが先ではないか」と指摘する。ただ、小森さんは法制定と方針策定を受け「いじめ問題について、国民全員が連携して向き合わないといけないシステムになったことは良かった」と話した。

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