スーパーカーでトラックを追跡したうえで因縁をつけ運転手の免許証を撮影し、不正作成したクレジットカードで商品を購入し詐欺罪に問われた斎藤貴聡被告(32=逮捕時)の初公判が1月8日、東京地裁で開かれた。 起訴状によると斎藤被告は、妻の智華被告(30=同)と夫婦の知人で神奈川県横浜市の派遣社員・野村祐貴被告(30=同)の3人でリースしたフェラリーやランボルギーニでトラックを追跡。≪ボルトが飛んできて車体に当たり傷が付いた≫などと因縁をつけて運転手の免許証を撮影。それを基にクレジットカードを不正作成し、大阪府内や東京都内の家電量販店でアイフォンなどを購入したとして昨年9月3日、詐欺罪で逮捕された。 「夫婦は豊洲のタワーマンションに住み、派手な生活を送っていました。しかし、その資金源は不正購入したアイフォンなどを転売して得たものでした。31人分、71枚のクレジットカードを偽造し、被害総額は9500万円以上にのぼります」(捜査関係者) 昨年11月に野村被告、12月に智華被告の初公判が先に行われている。法廷で明らかになったのは、システム化された犯行手口、そして斎藤被告夫婦と野村被告のいびつな関係だった。 貴聡被告と野村被告は大学時代のカヌー部の先輩後輩だったという。なぜか智華被告が野村被告に連絡をし、貴聡被告と交流が再開。そして今回の詐欺に関わるようになった。 「野村被告は斎藤夫婦から決められた10~20%の報酬しかもらっていませんでした。貴聡被告と野村被告は大学時代から主従関係にあり、今回の誘いも断ることができず加担してしまったようです。卒業してしまえば関係性は切れてしまうものですが、今はSNSで簡単につながってしまいます。昔の関係がズルズルと続いてしまったのかもしれません」(全国紙司法担当記者) ◆「夫の暴力や脅し」 2人は起訴事実を認めたうえで野村被告は、 「(貴聡被告と)主従関係にあった」 と主張。智華被告は涙ながらに、 「夫の暴力や脅しがあり断れなかった」 とそれぞれ主張している。 「智華被告は高級ブランドで着飾り、派手な生活をしていました。夫婦が首謀者と思われていたので、智華被告の証言は意外なものでした。貴聡被告が初公判で何を語るか注目されていました」(前出・記者) 上下グレーのスウェット姿で入廷した貴聡被告は、根元から半分ほど黒くなったボサボサの金髪。左前髪をゴムでくくり、ボディビル大会に出場しただけあって、がっしりとした体躯は不気味な威圧感を与えた。開廷前には不貞腐れた表情で満席の傍聴席に鋭い視線を向けた。 この日、明らかになったのは貴聡被告がゴールドジムの更衣室でも盗みを働いていたこと。更衣室のロッカーから免許証を盗み、クレジットカードを偽造。酒店で高級ウィスキー13本、販売価格290万円相当を購入し、買い取り業者におよそ250万円で転売していたのだ。 裁判長から「起訴状に間違っているところはありますか」と問われると法廷内に沈黙が広がる。およそ10秒ほどの沈黙の後に貴聡被告は「特にないです」と答えた。そして意を決したように、 「意味をはき違えてほしくない所がある。斎藤智華と共謀はしていません。日常から暴力と暴言で服従させていた」 と早口で主張した。さらに主従関係にあったとされる野村被告との関係については、 「野村とは主従関係はありません。私としては必要のない人間。私が指示したということはありません。野村が『お金に困っているから一緒にやりたい』と言ってきた」 と野村被告の証言を真っ向否定したのだ。 ◆夫は妻を庇っているのか? 「野村被告は貴聡被告の大学のカヌー部の後輩。智華被告がSNSで野村被告に連絡を取り再会し、犯行を行うようになりました。では、なぜ智華被告が連絡を取ったのかは不明です。智華被告が主導的な立場だったのか、服従していたのかでは量刑に影響します。今後は3人の証言の食い違いや矛盾点が焦点になるでしょう」(全国紙社会部記者) 貴聡被告は妻を庇っているのか。10秒の沈黙が意味するものとは何だったのか。今後、裁判で明らかにされていくだろう。