隣国で国内外を揺るがす、異常事態が続いている。早期の正常化を求めたい。 韓国高官犯罪捜査庁(高捜庁)など合同捜査本部は、「非常戒厳」宣言を巡って内乱を首謀した容疑で、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領を逮捕した。現職大統領の拘束、逮捕とも史上初めてだ。 尹氏は拘束前の映像メッセージで「この国では法が全て崩壊した」と主張し、黙秘しているという。徹底抗戦する構えを崩しておらず、政治混乱の長期化が懸念される。 捜査当局は今月3日、内乱容疑で尹氏の拘束令状を取ったが、2週間にわたって大統領側は抵抗した。失敗を受け、大幅に増員した捜査員計千人超を投入した。バリケードや鉄条網で「要塞(ようさい)化」した公邸を突破し、身柄を拘束した。 高捜庁が令状執行を妨げた警護庁トップを辞任に追い込み、職員の一部を離反させたことも今回の拘束につながった。 憲法裁判所では、国会で弾劾訴追された尹氏を罷免するかどうか判断する審理も始まった。尹氏側は正当性を訴えているが、非常戒厳が憲法上の要件を満たしていたかが焦点となる。 混乱の原因は、尹氏が昨年12月、野党が国政や司法をまひさせているとして戒厳令を宣言したことにある。政治活動や言論を統制しようとし、軍を国会に突入させた。 民主政治を脅かす暴挙と言わざるを得ず、尹氏は捜査に協力することで事実を明らかにする責任がある。 世論調査では、非常戒厳以降、与党は支持率で野党に大きく引き離されていたが、直近では拮抗(きっこう)しており、逆転した調査機関もある。 逮捕時には、尹氏支持者の一部が地裁に乱入し、内部を破壊する騒ぎもあった。 大統領代行の首相への弾劾訴追など野党の強硬な政治手法への反発や、保守層の結束があるとみられる。 与野党が歩み寄り、いったん政治を正常化することが必要ではないか。 東アジアの安全保障への影響が気がかりである。 北朝鮮はウクライナに派兵し、ロシアと軍事的な関係を深めるとともに、今年に入っても日本海側へ弾道ミサイルを発射するなど挑発を強めている。 20日には、トランプ氏が米大統領に就任する。自国優先を掲げ、多国間協力に消極的になるとみられる米国に対し、日韓の連携はより重みを増す。韓国のトップが不在では、意思疎通が停滞する恐れがある。 韓国では、政治の対立とともに、国民レベルでも近年の経済格差の拡大で、分断が深まっている。弾劾賛成派と反対派に分かれ、感情的なぶつかり合いが続けば、社会に長くあつれきを残しかねない。まずは国政を落ち着かせ、冷静な議論の土台を整えてもらいたい。