プロパンガスの訪問営業で、契約中のガス会社が撤退するといった虚偽の情報を伝えて不正な契約の切り替えを行ったとして、富士宮署と静岡県警生活保安課は21日、ガスなどの代理営業受託事業者「Dear」(東京都)の代表や従業員ら4人を特定商取引法違反の疑いで逮捕した。関係者によると、同様のうたい文句による営業行為の被害確認は県東部を中心に100軒を超えるとみられ、県警が勧誘の実態を詳しく調べる。 逮捕されたのは、前代表取締役の男(40)=熊本市中央区=、現代表取締役の男(32)=同区=、当時従業員だった男(31)=静岡市清水区蒲原=と男(20)=犯行当時(19)、富士市=の4容疑者。逮捕容疑は共謀して2024年4月上旬、富士宮市の80代夫婦に対し、従前から契約していた会社が撤退するとのうそをつき、受託している県中部のガス供給会社に契約を切り替えさせた疑い。申し込み時に法定事項が記載されていない不備のある書面を交付した上、売買契約解除(クーリングオフ)に関する説明もしなかった疑い。 男が夫婦宅を訪ねて説明し、現代表取締役の男、当時従業員だった男の両容疑者は書類を管理、前代表取締役の男は当時の代表取締役で総括していたとみられる。 関係者によると、4人は日本瓦斯(東京都)と契約している家庭を狙って訪問していた可能性がある。日本瓦斯によると、22年以降、県東部の複数の顧客から同様の触れ込みで切り替え営業を受けたとの相談があるという。 ■競争激しく強引な勧誘も プロパンガス業界は取扱事業者が多く、以前から顧客獲得の競争が激しく繰り広げられてきたといわれる。業界関係者によると、近年は契約手数料の獲得などを目的にした勧誘専門の業者が増え、強引に切り替えを迫る事例があるという。 県LPガス協会によると、県内のプロパンガス利用者は約80万軒で、販売事業は大小500社ほどが行っている。人口減やオール電化などの加速の影響で利用者は減少傾向にある。 そうした状況下、安価と勧めて契約を取り即座に値上げするといった手法が確認されているという。県内の消費生活相談窓口には、毎年150件前後の相談が寄せられている。 同協会は、訪問営業に対する不安を受け付ける電話相談窓口を設け、県警などと情報を共有している。