韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」宣言から1カ月余り、ついに今月19日早朝、尹大統領が内乱首謀容疑で逮捕された。現職大統領の逮捕は初めてである。 今回の「非常戒厳」宣言は、全斗煥・国軍保安司令官主導で軍が国会を武力で掌握し、金大中、金鍾泌ら主要な政治家を逮捕して民主化運動を押しつぶした1980年5月の事件をほうふつとさせる、あまりにも時代錯誤的な措置であった。この事態が韓国人の危機意識を高め、深夜にもかかわらず国会議員はもとより多くの市民が抗議に集まったことで、非常戒厳がわずか6時間で無血のまま解除されたのは不幸中の幸いであった。 ただ、その後も尹大統領への弾劾訴追案が与野党の思惑をめぐって難航した上、内乱容疑での尹大統領に対する捜査に対し尹氏が出頭を拒み、捜査当局が尹氏への逮捕状を用意したのに大統領警護庁がその執行を拒むなど、一種の「二重権力」に近い状況になる混乱が見られた。 今回の韓国の混乱の背景には、大統領の与党「国民の力」が国会で少数の議席しか確保できず、尹政権の支持率低迷と相まって「共に民主党」を中心とする野党勢力に政府予算案を否決されるなど、さまざまな「妨害」を受けていたことがある。ただ、こうした状況は韓国と共に1980年代以降ほぼ無血の民主化を達成した台湾でも現在見られている。