【解説】 トランプ氏、プーチン氏に国際社会への復帰を呼びかける

スティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長(モスクワ) 電話1本で、ウクライナでの戦争が魔法のように終わるわけではない。 これから話し合いが始まるだろう。だが、それがいつ、どのように妥結するのかは不透明だ。 それでもロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、今回の電話協議をしただけで、すでに外交的勝利のようなものを手にした。 何しろ彼は3年前、政治的な荒野にいた。 ウクライナへの本格侵攻を決断し、世界からのけ者にされた。 国連は総会で、ロシアの「ウクライナに対する不法な武力行使」を非難する決議を、圧倒的多数で採択した。 ロシアは数多くの国際的制裁を受けた。翌年には国際刑事裁判所(ICC)が、プーチン大統領に対する逮捕状を発行した。 当時のジョー・バイデン米大統領は、プーチン大統領をどうみているのか隠そうとはせず、「殺人的な独裁者」、「純粋な悪党」と非難した。 ロシアが2022年2月にウクライナに大規模侵攻を仕掛けてからは、プーチン氏とバイデン氏の間の電話はなくなった。 そして2025年。 アメリカで大統領が代わり、スタイルが変わり、言葉遣いが変わった。ロシアに対するアプローチもまったく違うものになった。 トランプ氏は、ウクライナでの戦争を終わらせるため、プーチン氏と「とても緊密に協力」したいとしている。また、両者が「互いの国を訪問し合う」ことを望んでいる。 プーチン氏も明らかに同じ考えのようで、トランプ氏をモスクワに招待するとした。 もし訪問が実現すれば、米ロ関係の大きな転換を意味する。アメリカの大統領がロシアを訪問するのは10年以上ぶりだ。 多くの点で、プーチン氏はすでに望んだものを手にしている。それは、ウクライナについて、おそらくはウクライナやヨーロッパの頭越しにアメリカと直接交渉する機会であり、国際政治の場で重要な役割を担う機会だ。 だが、プーチン氏がどこまで妥協する気なのかは見通せない。 ロシア政府関係者らは、話し合いの用意はできていると主張する。しかし実際にはすぐに、2024年6月にプーチン氏が示した、最後通告のような「和平案」に話を向ける。 この案ではロシアは、自分たちが支配しているすべてのウクライナ領土に加え、ウクライナが現在管理している同国の領土もいくらか獲得する。 そのうえ、ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)への加盟を認められず、ロシアは西側の制裁が解除される。 ロシアの新聞は今週初め、こう伝えた。「ロシアは話し合いの準備ができている。しかし、自分たちの条件でだ」。 「外交辞令抜きで言えば、それは実質的に最後通告だ」 (英語記事 Trump offers Putin a way back in from the cold)

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