(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ スパイに狙われたのは「21世紀のシャーロック・ホームズ」と呼ばれた男 [ロンドン発]ロシアの手先として欧州でスパイ活動をしていた英国在住ブルガリア人ネットワークの全容が、ロンドン警視庁の捜査と英BBC放送の調査報道であぶり出された。ウラジーミル・プーチン露大統領の標的になったのはロシアの謀略を次々と暴いたジャーナリストたちだ。 狙われたのは、ロシアの焦点を当てた独立系の調査報道メディア「ザ・インサイダー(The Insider)」において、衛星画像、通話記録、YouTubeの動画、デジタル情報など公に手に入るあらゆるデータを駆使してプーチンを追い詰めてきた“21世紀のシャーロック・ホームズ”クリスト・グロゼフ氏と、ロマン・ドブロホトフ氏ら。 ブルガリア人のグロゼフ氏は3月9日、BBCラジオ4の番組に出演し「ロシア工作員が2022年にウィーンの私のアパートに侵入した。もし自分の部屋でコンピューターゲームをしていた息子が気付いて部屋から出ていたらどうなっていたかと考えるだけでもゾッとする」と語った。 ブルガリア人スパイが自分の暗殺方法を想像したリストを入手したグロゼフ氏は「まるでフィルム・ノワール(犯罪映画)のような感じ」と表現する。彼らが空想した方法の一つは過激派組織ISの自爆テロ犯を雇い、通りを歩くグロゼフ氏の隣で自爆させるというものだった。