(朝鮮日報日本語版) 国歌を知らない韓国の小学生
朝鮮日報日本語版 2012年3月1日(木)11時8分配信
先月28日、ソウル市西大門区のあるテコンドー道場。午後クラスに通う小学1−6年生18人に「伴奏に合わせて愛国歌(韓国の国歌)を歌ってほしい」と頼んだ。すると「東海(日本海)と白頭山が/乾き果てすり減るときまで」という最初のフレーズが終わると、歌詞が出てこない児童が続出した。2番の「南山の上のあの松の木」で始まるフレーズを歌えたのはわずか3人。児童の大半が1番さえまともに歌えなかった。ほかの児童が歌っているのを聞いてたどたどしく一緒に歌う子ども、口を開けているだけの子どもが多かった。「難しい」「どうして知らない歌を歌わせるの」などと言う子もいた。別のテコンドー道場でも、状況はほぼ同じだった。
本紙はソウル市内のテコンドー道場5カ所(竜山区、西大門区、松坡区、江北区、瑞草区)を無作為に選び出し、男女小学生100人を対象に愛国歌を歌わせ、歌詞を書かせる調査を行った。
結果は衝撃的だった。4番まで全て書けた児童は1人もおらず、1番だけを書いた児童は26人、2番までは8人、3番まで書けた児童は2人だった。韓国語のつづりが少し違っていても正解とした結果だ。
残りの64人は1番さえまともに知らず、うち18人は白紙で答案を提出した。低学年(1−3年生)だけでなく、高学年(4−6年生)の中にも、1番さえ知らない児童が多かった。「南山の上のあの松の木/乾き果てすり減るときまで」など、意味の通らない誤答が続出した。
児童の大半は、愛国歌の作曲家も知らなかった。「安益泰(アン・イクテ)」と正しく答えられた児童は100人中7人にとどまり、93人は空欄のままか、誤った名前を書いた。半分以上が空欄で、「大統領」「李栗谷(イ・ユルゴク=儒学者・李珥〈イ・イ〉)」「世宗大王」「申師任堂(シン・サイムダン)」などと書いた児童もいた。また、3年生のある児童は「ベートーベン」と書いた。
小学校では、1年生の児童に愛国歌を教えている。1年生用の教材には「愛国歌を歌うときは正しい姿勢で立って歌う」といった説明とともに、愛国歌のメロディーと歌詞が紹介されている。また、1番から4番までの歌詞の一部を空欄にし、児童に回答させる箇所もある。2年生からは愛国歌に関する特別な教育内容や指針はない。
だが今回の調査結果を見ると、1年生だけとはいえ、学校で愛国歌をきちんと教えているのかどうか疑わしい。ある女性教師(26)は「放送朝礼のとき以外、児童が愛国歌を歌う機会はほとんどない。朝礼で歌わなかったり歌詞をよく知らなかったりしても、叱られることはない」と語った。ある男子児童(11)は「愛国歌は1年生のときに一度習った。先生も皆が1番しか知らないことを分かっていて、朝礼のときは1番だけを歌わせる」と話した。
ソウル市教育庁(教育委員会に相当)関係者は「(愛国歌教育に対する)教育庁の政策があるわけではなく、各学校がそれぞれ教育しているのが現状だ。(愛国歌を知らない児童が増えたのは)『日帝式教育』だとして屋外朝礼などが廃止され、愛国歌を歌う機会がなくなったためだと思う」と話し、対策を講じる考えを示した。
高麗大学教育学科のホン・フジョ教授は「公教育の最も重要な目的の一つは共同体意識を高め、国と社会に対するアイデンティティーを確立することだが、未来の主役たちが愛国歌さえ知らないということは、非常に衝撃的だ。これは私たちが自ら未来を手放しているようなものだ」と警鐘を鳴らした。