<福岡市・禁酒令>発令1週間 苦肉の策 広がる波紋
毎日新聞 2012年5月28日(月)15時29分配信
福岡市の高島宗一郎市長(37)が、全市職員に外出先での1カ月禁酒を要請する「禁酒令」を出して28日で1週間が過ぎた。市職員による飲酒絡みの不祥事が相次いだことを受けての苦肉の策だったが、賛否両論の議論は次第に広がりつつある。
「これはペナルティーですよ。もう職員は酒禁止!」。高島市長は19日の緊急幹部会で「禁酒令」の検討を指示。「禁酒令」を出した21日の臨時幹部会では「ショック療法も必要。『腐ったミカンのためにどうして』と思うかもしれないが、1カ月お酒との向き合い方を考えてほしい」とも訴えた。
福岡市内では18日夜、市港湾局職員がタクシー運転手への暴行容疑で、更に市保育課職員が同僚への傷害容疑で、それぞれ逮捕された。いずれも飲酒の上での事件とみられ、事件発生を知った高島市長は「青くなった」(市幹部)という。同市では06年8月、飲酒運転をした市職員(当時)による3児死亡事故が発生。以降も市職員による飲酒絡みの不祥事が絶えないからだ。
今のところ市職員の多くは「禁酒令」容認派らしく、市人事課によると「違反の報告はない」。市港湾局のある職員は「仕方がない。お酒の誘いは断り、自宅で飲むのもやめる」。職員が逮捕された市こども未来局は「禁酒令」を7月末まで伸ばすことを決めた。
◇屋台や居酒屋悲鳴
時事問題を随時取り上げるインターネット大手「ヤフー」の意識調査でも「禁酒令」への支持は多かった。「福岡市の『禁酒令』は妥当?」との問いかけに約4万8000票(26日現在)の回答があり、その内訳は▽妥当72%▽妥当でない27%▽その他、分からない3%。毎日新聞が22日に実施した九州・山口の100人を対象にしたアンケートでも、「当然」「仕方ない」の合計は70人に上る。
だが、市職員約1万6300人(教員含む)が外出時に禁酒する影響は大きい。市役所近くの居酒屋店長は「営業努力でこの1週間は何とか売り上げを下げずに済んだが、1カ月トータルではどうなることか」。福岡名物・屋台は市役所周辺にも多い。屋台店主(62)は「売り上げは3、4割落ちた」と椅子に座り込んだ。
市役所内にも不満はくすぶっているらしく、市幹部の一人は「現場からは『腐ったミカンは言い過ぎ』『大半の職員はまじめにやっているのにペナルティーはないだろう』などの声がある」と明かした。
高島市長は地元テレビ局・九州朝日放送の元アナウンサー。テレビ局出身だけに、今回の「禁酒令」は、世論の風を読んだ巧みな対策とも言えるが、ある市議は「市職員の不祥事なのに、トップとしての責任をどう取るつもりなのか。感情のまま怒鳴り散らし、『禁酒令』で職員に連帯責任を取らせるだけでいいのか」と批判する。
地方自治に詳しい新藤宗幸・東京都市研究所常務理事は「組織のトップと世論が変な共鳴をしている点が、大阪市の橋下徹市長と似ている。しかし、勤務時間外まで首長が口を挟む権利はない。(禁酒令を認めれば)今後、私生活への介入は当然という風潮を招きかねない」と警鐘を鳴らす。【木下武、関東晋慈】
◇福岡市の「禁酒令」
市の全職員に公私を問わず1カ月間、自宅外での原則禁酒を要請した高島市長名の通知。期間は5月21日〜6月20日。職務命令でなく、違反しても直ちに処分対象にはならないが、教育・指導が行われる。この間に飲酒して不祥事を起こせば通常より処分が重くなる。結婚式や親類との付き合いでも原則禁酒で、ソフトドリンクでの対応を求められる。結婚式での新郎新婦の三三九度などは例外。
◇福岡市職員による主な飲酒絡みの不祥事
2006年8月 西部動物管理センター職員が車を飲酒運転して追突事故を起こし、幼いきょうだい3人が死亡
2007年2月 人事課付職員が飲酒運転し軽自動車に追突
8月 早良区役所入部出張所職員がバイクを飲酒運転し衝突事故
2008年2月 学校給食公社職員が車を飲酒運転
4月 中央区役所職員がバイクを飲酒運転し人身事故
2012年2月 消防局職員が車を盗んで飲酒運転
4月 市立室見小教頭が車を飲酒運転
5月 港湾局職員がタクシー運転手に暴行
〃 保育課職員が同僚を殴り、傷害