4大学1機関も預け金か 計4億6000万円 不正経理解明へ
産経新聞 2012年7月15日(日)7時55分配信
京都大大学院薬学研究科の男性元教授が物品を架空発注し、研究費の一部を医療機器販売会社(東京都世田谷区)に管理させる「預け金」と呼ばれる不正経理をしていた疑惑で、京大以外の5つの大学や研究機関でも同社への預け金が存在する可能性のあることが14日、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部も同様の事実を把握。元教授が業者に預けていた研究費を流用していたとして業務上横領容疑で捜査を進めるとともに、同社をめぐる不正経理の全容解明を目指しているもようだ。
関係者によると、医療機器販売会社は昨年10月、約15億円の負債を抱えて東京地裁に民事再生法の適用を申請し倒産。には、銀行や取引業者のほか、5つの大学や研究機関の名前と債権額が記載されていた。
債権の最多額は独立行政法人「国立成育医療研究センター」(世田谷区)の約3億8千万円。ほかに日本大、慶応大、明海大、東京慈恵医科大の4大学が、数百万〜数千万円の債権を持つことが判明した。大学や研究機関の債権は計約4億6千万円に上る。
複数の学校法人や公的機関の監査を手がけた経験がある公認会計士の柴山政行氏によると、大学などが業者の債権者になることは通常考えにくいといい、「研究者個人と同社との間で預け金などの不正な経理処理が行われた可能性がある」と指摘している。
国立成育医療研究センターには京大大学院の元教授が平成3〜15年にかけて勤務し、薬剤治療研究部長などを務めていた。元教授は在籍時から、物品の発注などで同社と付き合いが深かったことから、センターは債権は元教授が残した預け金の可能性があると判断。昨年10月以降に調査を実施したが、元教授は「(研究費の預けは)していない」と回答していた。
ただ、債権者リストに載った大学などは産経新聞の取材に、同社側からは債権の内訳に関する資料の提供はなく、内部調査が進んでいないと説明。元社長は取材に応じていない。
債権者リストを確認した特捜部は、昨年12月ごろから同社の資金の流れについて捜査を開始。元教授が、同社に管理を委ねた研究費を私的に流用した疑いが強まったため、今年5月に業務上横領容疑で勤務先だった京大など関係先を家宅捜索した。
元教授は遺伝子情報を基にして薬を作る「ゲノム創薬科学」の専門家で、京大の「最先端創薬研究センター」のセンター長に就任していたが、今年6月28日に辞職している。
【用語解説】預け金
物品の架空発注で捻出した資金を取引先の業者に管理させる不正経理のこと。裏金作りの典型的な手法とされ、文部科学省は禁止するガイドラインを作成し大学などに通知している。今年1月には山口大学元教授が業者と共謀し、消耗品の発注を偽装する手口で大学から約2400万円をだまし取ったとして詐欺容疑で逮捕されるなど、刑事事件に発展するケースもある。
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