中学校長緊急会議 いじめ、被害生徒の立場で判断 奈良
産経新聞 2012年8月1日(水)7時55分配信
■巧妙・潜在化で発見困難
大津市の中2男子自殺問題などを受け、県教委は31日、県内の中学校長を集めた緊急の会議を橿原市で開いた。会議では、生徒間のトラブルを「いじめ」と認定するかは、被害生徒の立場で判断することを確認。いじめの手口が巧妙化し、「発見が難しい」などと現場で困惑している現状も報告された。
県教委によると、県内の公立の小中学校と高校のいじめの認知件数は、平成18年度1037件、22年度324件で、全体としては減少傾向にある。一方で、中学校の認知件数は22年度164件と、全体の約半数を占める。
会議には、県教委や県中学校長会などから関係者約30人が出席した。
県教委は冒頭、いじめの解釈について文部科学省の定義を引用し、「受けた側が『いじめ』と感じれば、いじめと共通認識し、どこまでが『いたずら』で、どこからが『いじめ』という線引きはしない。いじめが明らかになれば、学校は迅速に適切な対応を」と伝達した。
さらに、いじめの被害生徒が学級担任ら学校関係者に対し、相談するケースが少ない現状を指摘。誰にも相談せず抱えこみ、いじめが潜在化する危険性も指摘し、「生徒が発するサインを見逃さないよう、教員1人1人がアンテナを高く張る必要がある」と呼びかけた。
学校現場からは、いじめを早期に発見するためアンケートを実施していることや、小学校や保育所と連携して幼少期からのいじめ問題啓発に取り組んでいることが報告された。
一方で、いじめが巧妙化、潜在化しており、いじめの実態把握が困難とする意見も聞かれた。
いじめ問題で独自にアンケートを実施している葛城市立白鳳中の喜多祥智(よしてる)校長は、インターネットを通じた誹謗・中傷を例にあげ、「どこでいじめが起きているのか、非常に分かりにくくなっている」と指摘。「いじめの体験は被害者、加害者とも、その後の人格形成に大きく影響する。苦しんでいる子供たちの気持ちを一番に考えたい」と話した。
アンケート方法についても、「『自分たちは疑われているのか』と生徒に不信感を抱かせる可能性があり、まずは犯人捜しではないと伝えることが重要」とした。
また、奈良市立富雄南中の新免(しんめん)照代校長は「いろいろな調査を試みても、いじめられている側の本音を聞き出せないのが実情。困ったこと、苦しいことは何でも教師に相談してくれればいいのだが…」と、現場の悩みを打ち明けた。
今回の会議で出された意見や提案は、県内全ての中学校、高校で8月中旬以降実施されるいじめ問題のアンケートや、今後のいじめ問題対策などに反映される。