わいせつ画像「これくらいなら大丈夫」ベテラン教師が超えた一線
産経新聞 2012年8月11日(土)18時22分配信
厳しい倫理が求められる教師や警察官が、インターネットやメールを使ったわいせつ画像事件で警視庁に逮捕される事件が7月に相次いだ。ネットに女性のわいせつ写真を公開したとして、わいせつ電磁的記録陳列などの容疑で逮捕されたは、「これくらいなら大丈夫だと思った」と供述したという。パソコンや携帯電話の普及で、ネット上で写真を公開したり交換したりする行為はすっかり一般的。専門家は「だからこそ、わいせつ犯罪の一線を越えやすい」と警鐘を鳴らす。(西尾美穂子)
■自分の下半身写真を掲示板に
男性の露出した下半身、裸の男女が交わるシーン…。あるネット上の掲示板には、局部にモザイクもかけないまま、わいせつな画像が何枚も公開されていた。
捜査関係者によると、その開設者は教諭の男。学校での勤務後、自宅に帰って、携帯電話を使って写真を張り付けるのを楽しみにしていたのだという。一日2、3回のペースで、1枚、また1枚と次々に貼り付けていたのは、ネットで探してきた裸の写真などだが、中には、局部が露出した写真や自分自身の下半身写真が含まれていた。
誰でも閲覧できるこの掲示板には、「必ずコメントを書き込むこと」と写真投稿のルールも設定されていた。男は、自分でつくったこのルールに従って、「自分で足開く」や「ソファで尻丸出し」などと、わいせつな写真にコメントを書き込んでいた。自分の身分を隠すためか、「せいさん」というハンドルネームを使用しており、もう10年近く前からこうした行為を繰り返していた。
■生活指導担当 教育者向けの著者も…
「仕事のストレスからやってしまった」「これくらいなら大丈夫と思っていた」
警視庁サイバー犯罪対策課によると、男は、逮捕後の調べに、こう供述したという。
逮捕容疑は、平成22年4月〜今年1月、携帯電話から自分で管理する掲示板に、下半身を露出した女性の画像など15枚を貼り付けたとしており、男は8月初め、わいせつ電磁的記録陳列罪などで略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けた。
箕面市教委などによると、男は夜間大学を5年かけて卒業した後、教員となったベテラン小学校教師。「意欲的に取り組む先生」「厳しさと優しさを兼ね備え、児童に信頼される先生」とみられていた。
事件当時は、市立小学校の生活指導担当でもあり、教育者向けに生活指導の雑誌を発刊している小中学校の教員らの団体「全国生活指導研究協議会」で、指名全国委員も務めていた。教育者向けの本も出版し、全国各地の学校で、教員向けの講演をするなどもしていた。「そんな先生がなぜ、逮捕されることになったのか…」。それが周囲の印象だった。
■携帯電話1つで簡単に…希薄な罪の意識
「学校教育への信頼を損なったことを深くお詫びする。教育公務員としてあるまじき行為であり、逮捕容疑が事実ならば、懲戒免職を検討する」
事件を受け、市教委はコメントを発表した。捜査関係者によると、同居していた妻も、「携帯電話をよくいじっていたことは知っていたが、まさかそんなことをしているとは思わなかった」と絶句したという。
ただ、ネット上にわいせつ画像があふれる最近では、こうした犯罪は珍しくないのが現実。「ネット上のわいせつ画像犯罪は、携帯電話1つで簡単にできるだけに、罪の意識が希薄なままに、やってしまう。職務で強いプレッシャーにさらされる教師が、ストレス解消気分で『これくらいなら大丈夫』という感覚になる危険性は否定できない」。心理カウンセラーの根本裕幸氏は警鐘を鳴らす。
■女子高生に素性を明かした巡査部長
7月には、が、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで逮捕される事件もあったが、やはり、触法意識は希薄だった様子がうかがえる。
逮捕容疑は昨年10月、ブログで知り合った当時16歳だった女子高生に、携帯電話で裸の写真3枚を送信させ、自分の携帯電話に保存したという内容だった。
警視庁少年事件課は、18歳未満に裸の写真を送らせ、自分の携帯に保存する行為を「児童ポルノの製造」と解釈したのだが、同課によると、この巡査部長は、女子高生に対して、自分のことを神奈川県警の警察官で剣道の全日本覇者などと正直に明かすなどしており、事件当時、逮捕される行為だという認識がなかった可能性もある。
容疑内容については「間違いない」と認めているという。
ネットや携帯電話を使った犯罪については規制強化が行われ、警察もわいせつ画像や児童ポルノなどの取り締まり強化を進めている。ある捜査関係者は「携帯電話やパソコンで簡単にできることも犯罪になるかもしれない。こうした機器の使用にも、倫理観と注意が必要だ」と話した。