<大津いじめ>「調査委委員が家庭情報漏らす」遺族側抗議へ
毎日新聞 2012年8月24日(金)3時1分配信
いじめを受けた大津市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺した問題で、市が25日に初会合を開く外部調査委員会の委員に内定している滋賀県臨床心理士会会長の野田正人氏が、生徒の家庭に関する個人情報を入手し、第三者に漏らしていたとして、遺族側が24日、市に抗議文を提出することが、関係者への取材で分かった。委員としての適格性を問題視しており、外部調査委が開催延期を含め紛糾する可能性が出てきた。
外部委の委員は市と遺族側が3人ずつ推薦する異例の形式で設置され、野田氏は市側推薦の一人。外部委の設置目的は「学校で起きたいじめなどの事実解明」と要綱で定めている。遺族側代理人によると、漏らされた個人情報は県子ども家庭相談センター(児相)に生徒の父親が相談した内容といい、「調査に関係のない家庭の情報で先入観を持って調査にあたる委員の中立性は疑わしく、委員就任に際して市が公平・公正な調査を求めた要綱に違反する」などと批判している。
野田氏は毎日新聞の取材に対し「生徒の家庭状況について職務上の関係者と話したことはあるが、無関係の人に語った記憶はない。その情報を私から求めたことはない」とし、「一般論としては自殺の原因は家庭要因も調査すべきだ」と述べた。
野田氏は立命館大教授で、児童福祉などの専門家。遺族側の関係者は、野田氏が委員就任の打診を受けた7月下旬以降、生徒の自殺前に父親がセンターに相談した内容を複数の人に漏らしたとしている。野田氏から情報を聞いたとする一人は取材に「普通は知り得ない家庭状況の具体的情報を話していた。中立な調査ができるのか疑問に感じた」と語った。
父親が相談した家庭相談センターの西村晃平所長は「児相には守秘義務があり、相談内容が第三者に漏れ伝わることは絶対にあってはならない」と話した。
日本臨床心理士会倫理綱領には、業務上知り得た対象者などの個人情報の守秘義務が明文化されている。【千葉紀和、前本麻有】
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野田教授、委員を辞退 大津中2自殺第三者委
京都新聞 2012年8月24日(金)22時59分配信
大津市で昨年10月、中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺し、いじめとの関連が指摘されている問題で、市は24日、再調査のために設置する第三者委員会の委員に就任予定だった立命館大の野田正人教授(滋賀県臨床心理士会会長)が辞退した、と発表した。25日の初会合は、委員1人が欠ける波乱の中でのスタートとなる。
遺族側の代理人によると、生徒が亡くなる前、遺族が県の中央子ども家庭相談センター(児童相談所)に相談した内容を野田教授が他人に漏らした可能性が高いと判断。「情報漏えいの疑惑があり、そういった情報を事前に知り得る人が委員に就任するのは好ましくないのでは」と委員の適格性を市に問い合わせる予定だった。
市によると、野田氏は電話で、情報が入る立場であることは認めたが、「無関係の人に情報を漏らした記憶はない」と説明。遺族側が不快に思っている状況から「遺族との合意が重視される委員会で混乱を招く恐れがあり、委員を辞退したい」と伝えたという。
市は情報漏えいの真偽は確認していないが、野田教授の意思を尊重し、慰留せずに辞退を了承したという。
市は、県臨床心理士会の推薦で、野田教授に委員を依頼、野田教授も内諾していた。遺族側は「疑惑が出た以上やむを得ない。委員会は粛々とやってほしい」としている。
市は今後、団体推薦を通じ、新たな臨床心理士を選定する、という。第三者委の要綱上、委員の定員は6人以内としており、初会合は予定通り25日に開催する。