「体罰」難しい線引き ×…指導で手あげる、?…危険行為止める

「体罰」難しい線引き ×…指導で手あげる、?…危険行為止める
産経新聞 2013年2月2日(土)14時55分配信

 ■橋下市長「何が許されて何がだめなのか」

 大阪市立桜宮高校の男子バスケットボール部主将だった2年男子生徒=当時(17)=が体罰後に自殺した問題を契機に、各地で教員による体罰が次々と表面化している。スポーツ指導上の体罰が目立つ一方、生活指導上の事例もあり、教育委員会の関係者らは相次ぐ報告に頭を痛める。ただ、生活指導では他の生徒に危害を加えようとする生徒を制するようなケースもあり、スポーツ指導の体罰に厳格な橋下徹大阪市長ですら、生活指導は一線を画して「何が許されて何がだめなのかは分からない」と頭を悩ませている。(高久清史、高瀬真由子)

 ◆全国で事例続々

 「スポーツ指導において(生徒が)悪いことをやったわけじゃないのに手をあげるのは、体罰じゃなくて暴力だ」。橋下市長は、スポーツ指導での体罰は「意味がない」と強調する。桜宮高の問題発覚直後には「あっちゃいけないけどあり得る」と発言したが、自殺生徒の遺族との面会後、「自分の考えが間違っていた」と方針を転換させた。

 ただ、生活指導上では「どうしても手をあげなければならない場合、ルールはどうするのか。絶対手をあげちゃいけないというなら、教員に何か対抗策を与えてあげないときれい事になる」として、市教委にルールづくりを求めている。

 桜宮高の体罰問題が発覚した後、全国各地でさまざまな事例が露呈した。

 愛知県教委が全県立高校と特別支援学校173校を対象にした調査では、昨年4月以降、30高校で教諭ら52人による体罰を確認。うち32人が部活顧問で、高校駅伝の名門として知られる豊川工業高の陸上部監督の男性教諭も含まれていた。

 県教委担当者は「大阪の衝撃が大きくて調査に乗り出したが、ここまで多いとは思わなかった」と話す。

 ◆生徒「自分が悪い」

 一方、生活指導上の行為と判断されそうな体罰事例も少なくない。

 体罰問題の発端となった桜宮高のバスケ部顧問は平成20年9月、授業で組み体操の練習中、悪ふざけを繰り返した生徒を平手打ちしたり、引き倒したりした。生徒は「自分が悪い」と認め、保護者も処分を求めず懲戒処分は見送られた。

 大阪市立汎愛(はんあい)高校では、柔道部顧問の男性教諭が昨年4月、柔道の授業中に部員の3年女子生徒の頬を平手打ちした。市教委によると、教諭は「(女子生徒が)下級生に危険な絞め技を行っており、何度か注意したが、やめなかった」と説明。市の外部監察チームが調査に乗り出したが、市教委幹部は「危険な行為をやめさせるためだった」と同情的な見方を示す。

 体罰は学校教育法で禁じられ、文部科学省が19年2月に初等中等教育局長名で出した都道府県教委などに対する通知でも「いかなる場合においても行ってはならない」としている。

 ただ、通知では、他の子供に被害を及ぼす暴力の制止や、教員に対する暴力で、防衛のためにやむをえない場合などは、正当行為や正当防衛として「体罰に当たらない」としている。

 しかし、個々の事例によって、その線引きが難しいことも事実だ。

 ◆悩める市教委

 「(問題のある)生徒に手を出すことを一切禁止して、クラス運営ができるか」「何が許されるのか、正直分からない」

 橋下市長は1月31日の定例会見で、生活指導上のケースについて、迷える心境を吐露した。

 大阪市では、小中高校を対象に実態調査を行い、現実に即した生活指導上の対応のルールづくりを行う方向だが、作業には難しい判断が求められる。

 「ある程度の有形力の行使を認めるか、一切禁止の代わりに生徒を出席停止にしたりクラスからほうり出したりするか。どちらかの大きな方向性にいかないといけない」。橋下市長は例示しているが、市教委の担当者らは、現場実務とのジレンマに頭を悩ませている。

 体罰をめぐる問題について、ご意見、提言などをお寄せください。

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