中学柔道事故で賠償命令 来春から必修、安全策課題

中学柔道事故で賠償命令 来春から必修、安全策課題
産経新聞 2011年12月28日(水)7時55分配信

 「柔道指導者は子供の命を預かるという基本的なことを自覚してほしい」。判決後、男性の父で原告の小林泰彦さんと母、恵子さんはそう訴えた。来春から中学1、2年生で必修となる武道。柔道、剣道、相撲のいずれかを学校が選択するが、費用の安さや設備の容易さから柔道が大半を占めるとされる。安全対策や指導が適切に行われるか課題は多く残る。

 名古屋大大学院の内田良准教授の調査によると、中学と高校の柔道の部活動や授業など学校管理下での事故で、昭和58年度から平成22年度までの28年間に114人が死亡している。投げ技で頭を強打するなど、死亡に至らなくても高度障害が残るケースも多い。競技人口から考慮すれば事故率は高いとされている。

 来年の武道の授業は約10時間ほどが見込まれている。文部科学省では「生徒の技能の段階に応じて指導するのが大前提」としているが、授業終了までには投げ技などを習得し、試合形式でできるようになることを目標としている。

 このため文科省は再三、全国の教育委員会に対し、安全指導の徹底を求める通知を出してきた。

 だが、授業の進め方は体育教師の裁量で決められるため、統一的な指導マニュアルなどを国が示すことはできず、現場の判断に委ねざるを得ないのが現状だ。

 小林さんは「」の会長も務め、これまでに各地で柔道の危険性について考えるシンポジウムを開いてきた。「シンポジウムのアンケートでは体育の先生たちでさえ、『柔道は事故が多い。教えるのは怖い』と答えている。父母はもっと不安だ。これからもシンポジウムなどを開催し、柔道事故がなくなるよう活動していきたい」と訴えた。

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奈良中柔道事故訴訟きょう地裁判決、父「事故防止の出発点に」/横浜
カナロコ 2011年12月27日(火)5時0分配信

 横浜市立奈良中学校(同市青葉区)で2004年、柔道部員の男子生徒が顧問に掛けられた柔道技で障害を負ったとして、顧問らに損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、横浜地裁で言い渡される。生徒の家族は、原因究明と事故防止の対策徹底を訴えてきたが、部活動中などに生徒が命を落とす柔道事故は後を絶たず、2010年度までの28年間で少なくとも全国で114人が死亡した。生徒の父・小林泰彦さん(65)は「実態から目がそむけられたことで、多くの被害を生んだ。裁判所の公正な判決を、事故防止の出発点にしたい」と話す。

 「監督から寝技を繰り返し受けた息子は『苦しい』と何度訴えても続けられ、窒息死した」(秋田・高校1年)、「顧問に投げられた直後に意識不明になり救急搬送されたが、意識が回復せず死亡」(滋賀・中学1年)、「後頭部を強打した生徒は頭を抱えていたが、指導者が続行を命じ、再度投げられ、死亡」(広島・中学1年)…。

 柔道の部活動などで死傷した生徒の家族らが昨年立ち上げた「」。同会作成の報告書には子どもたちが亡くなった状況が記されている。

 28年間で114人が死亡。同会会長の小林さんが「衝撃的な数字」を知ったのは、会発足後間もないころだった。

 日本スポーツ振興センターは毎年、「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点」を発表。学校事故などを研究する名古屋大学の内田良准教授が集計し、前記の数字が浮かび上がった。競技人口当たりの発生率は、他競技に比べ突出し、年平均4人が亡くなっていた。

 死因分析では、技を掛けられた時の衝撃などにより頭部外傷が生じて死に至ったケースが中学は約8割、高校は約6割に上る。小林さんは「息子も、顧問との乱取りで投げられ、急性硬膜下血腫を発症した」と訴える。高次脳機能障害を負い、今も記憶障害や失語症に悩まされている。

 柔道は危険なスポーツなのか―。被害者の会が、欧米各国の柔道連盟や協会に「柔道事故に関する調査結果」を問い合わせたところ、いずれも事故はゼロ、もしくはほとんど発生していない状況が明らかになった。内田准教授は「問題は柔道そのものではなく、日本では安全配慮が十分になされていないこと」と指摘する。

 全日本柔道連盟は、6月に「柔道の安全指導」を改訂。「柔道に関わるすべての人の『安全対策』への取り組みが必要」とし、頭部・首のけが予防と対応について具体的に提示した。

 来年4月から、中学校の授業では武道が必修となる。小林さんは「欧米で事故を防げて、柔道発祥の日本でできないはずがない。二度と子どもの命をないがしろにしたくない。国も学校も、指導者も保護者も、危機意識を強く持ち、安全対策を勉強しなければならない」と訴える。

 ◆奈良中柔道事故 2004年12月、横浜市立奈良中学校で、当時中学3年生の柔道部員の男子生徒が男性顧問に技を掛けられ重傷を負い、後に脳に後遺症を負った。県警は07年7月に傷害容疑で顧問を書類送検したが、横浜地検は嫌疑不十分として不起訴処分とした。その後、横浜第1検察審査会が不起訴不当としたが、同地検は09年12月、再び不起訴とした。生徒と両親は07年12月、顧問と同市と県に損害賠償を求め提訴した。

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