清瀬いじめ 被害生徒が告白「学校にいたら死ぬかもしれないと思った」

清瀬いじめ 被害生徒が告白「学校にいたら死ぬかもしれないと思った」
産経新聞 2012年9月24日(月)11時43分配信

 「学校にいたら死ぬかもしれないと思った」。東京・清瀬の私立中学校で2年の男子生徒(13)が複数の同級生からいじめを受け、肋骨(ろっこつ)を折る重傷を負った事件で、男子生徒が自らが受けたいじめについて語った。(西尾美穂子)

 ■ささいなきっかけ、弁当毎日捨てられ…

 小中一貫校の小学6年だった昨年3月、同級生と部活のことで口論になった。今も思い出せないほどのわずかな出来事だったが、部活後、教室に戻るとランドセルと中の荷物が教室のごみ箱に捨てられていた。

 「普段のけんかの仕返しとは何か違うと思った」

 同学年の子供よりやや痩せた男子生徒は、静かな口調で振り返る。

 中学に進学した直後の4月、別の同級生にいきなり廊下で突き飛ばされ、壁に体を強くぶつけた。乱暴な同級生だったが、次第に仲のよかった友達まで嫌がらせをするようになった。

 筆箱は水にぬらされ、弁当箱は昼食前にほぼ毎日、ごみ箱に捨てられた。母親には「弁当はいらない」と言うようになった。

 「これって『いじめ』なの?」

 それまで友達は多かった。訳が分からずインターネットで「いじめ」の文字を検索した。家での食事ものどを通らずに体重が目に見えて減った。

 同級生には嫌だという気持ちを伝えなかった。「孤立するのが怖かった」。心配をかけたくないと、両親にも打ち明けなかった。

 7月、母親に問いただされて、いじめられていることを認めた。学校に相談したが、今年1月になって、別の同級生に馬乗りになられ頭を床のコンクリートに打ち付けられる事件が起きる。肋骨を骨折、意識不明で入院した。退院後、再びプロレス技をかけられ「これ以上、学校にいたら死ぬかもしれない」と心を決めた。

 3月に転校し、いじめはなくなったが、「恐怖感から新しい友達をつくることに臆病になっている自分がいる」。授業中でも突然、いじめられたときのことが頭に浮かぶという。

 「このままの自分だったら、これからの人生どうなってしまうんだろう。死にたいという気持ちが今も強い」と話す。加害者側の生徒らに対しては「真正面から嫌だったことを伝えたい。謝ってほしい」。静かな口調が、このときは力を帯びた。

 ■「もう少し話してくれれば」 悔やむ学校側

 男子生徒へのいじめについて、学校側は中学に進学した昨年4月末には確認していたとしている。しかし当初は、加害者側への指導や聞き取りをしていなかった。

 学校側は「男子生徒が『相手からやり返されるのが怖い』と話したため」と説明するが、男子生徒は「先生には、まずいじめた子に理由を聞いてほしかった。先生が見守っていてくれているという安心感はなかった」と話す。いじめの内容について、男子生徒が話す内容について、学校としては確認できたものも、確認できていないものもあるとしている。

 校長は「男子生徒が当時、もう少し、いじめについて話してくれていれば、と思っている。われわれができることはやってきたつもりだったが、対策が不十分だったのだろうという気持ちもある」と話している。

 【用語解説】清瀬いじめ事件

 東京都清瀬市にある中学校で今年1月、男子生徒(13)が同級生からいじめで馬乗りになって殴られるなどの暴行を受け、肋骨骨折の重傷を負った事件。警視庁東村山署は暴行の非行事実でこの同級生を児童相談所に通告した。男子生徒は別の同級生らからも、廊下で後ろから押されてけがを負ったなどとして、傷害と暴行容疑で同署に被害届を出していた。

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