<川崎中1殺害>学校現場、認知度低く…スクールSW
毎日新聞 2015年3月8日(日)2時31分配信
川崎市川崎区の多摩川河川敷で同区の中学1年、上村(うえむら)遼太さん(13)が刺殺体で見つかった事件。上村さんが通っていた中学校は同区に対し、スクールソーシャルワーカー(SSW)の派遣を要請しなかった。SSWは上村さんのような不登校や虐待など学校だけで対処しきれない事案に介入するのが役割だ。制度が機能しなかった背景に何があるのか。
◇「要請待ち」転換の兆し
「学校が家庭の状況を把握できていなかった」
市教委の担当者は要請に至らなかった理由をそう説明する。SSWは市の非常勤職員として市内全7区に各1人が配置され、必要に応じて学校側が派遣を求める。学校は1月8日以降不登校となった上村さんに対し、担任教諭が母親らに計34回の電話と5回の家庭訪問をしていたが、本人とは会えないまま事件は起きた。
「もし自分が担任でも、それが限界だったと思う」。千葉県内のある中学の女性教諭はそう語る。生徒が欠席すれば保護者に電話し、出ない場合は授業の合間を縫って何度も連絡をするが、授業や部活動、他の生徒への対応で手いっぱいだという。「生徒を守る前に自分が壊れそうになる」と明かすがSSWの要請を考えたことはない。「自分で何とかしなきゃと思ってしまう」
福岡県内でSSWとして活動する野中勝治さん(33)は活用が進まない現状について「役割が学校現場に伝わっていない」と指摘する。心のケアが中心で1995年から国が導入したスクールカウンセラー(SC)に比べ、2008年から配置が始まったSSWは認知度が低い。外部の人を受け入れたがらない学校特有の体質も手伝い、活動当初は現場で何もできないこともあったという。
一方で、「学校からの要請待ち」という姿勢の転換を図っている自治体もある。名古屋市は昨年4月、SSWやSC、警察OBら4人で構成する「子ども応援委員会」を市内11の中学に設置。全国で初めて常勤のSSWも11人採用した。きっかけは13年夏。市内の中2の男子生徒によるいじめ自殺だ。
SOSを見落とした背景に教師の多忙さがあったとして、同委メンバーは職員会議にも参加し、生徒らの情報を共有している。学校内を巡回し、家庭に問題を抱えた生徒がいれば訪問し、関係機関と対策を練る。
設置から約1年。不登校の生徒の中には改善の兆しもあるというが、樋口敦・子ども応援室長は「川崎の事件は人ごとではない。深刻な悩みを抱えている生徒がいないか、SOSを見落とさないようにしなければ」。元中学教諭で、教師向けのワークブックを出版しているSSWの佐々木千里・立命館大非常勤講師は「先生ひとりで解決するのは不可能。学校やSSWが連携し、チームとして取り組むことが重要だ」と話している。【斎川瞳、三木陽介】
◇スクールソーシャルワーカー◇
学校と家庭の連携が不可欠な問題で両者の間に入って解決を図る。大阪府が2005年に全国に先駆けて配置し、文部科学省は08年度から事業化した。有用性が高いとして15年度は今年度の1466人から2847人へ倍増させる予定。近年独自予算を組んで導入する自治体も増えている。