弘前大
元教授、論文撤回 データ疑義 佐藤学長が共著者 /青森
毎日新聞2016年6月25日 地方版
弘前大の佐藤敬学長(66)が米医師会雑誌などに共著者として発表した英文論文3編がデータの妥当性への疑義などから撤回されたことが24日までに分かった。佐藤学長は毎日新聞の取材に、「筆頭著者の依頼で英文の書き直しに協力したが、オーサーシップ(論文著者資格)の観点から共著者に加わるべきでなく、責任を感じている」と語った。
佐藤学長によると、3論文は「高齢者の骨粗しょう症に対する葉酸の効用」などの内容で2005年に発表された。筆頭著者は同大で佐藤学長の2年後輩の研究者で、00年11月〜03年3月に同僚教授だった。同大退職後、福岡県の病院に移り、副院長時代に論文を作成した。
論文には、佐藤学長がデータ収集や解析を担当したと記載されていたが、実際に行ったのは英文の校閲などだったという。同誌は今年5月19日、「データの妥当性に疑念があり、オーサーシップも不適切」としてホームページで懸念を表明。その後、同誌から「筆頭著者が論文を取り下げると言っている。同意するか」と佐藤学長に問い合わせがあり、同意した。3論文は6月3日、撤回された。
佐藤学長は「英文校閲もそれなりの作業量だったが、全体ではせいぜい10%程度の関与。オーサーシップから言えば名を連ねるべきでなかった。当時は迷いながらも共著者の表記に同意した」と苦い表情を浮かべた。佐藤学長はこれまで百数十本の英文論文を発表したが、撤回は初めてという。
オーサーシップを巡っては、STAP細胞問題で小保方晴子・元理化学研究所研究員が学位論文を取り消されるなどして社会的関心を集め、文部科学省が14年8月、研究不正に関するガイドラインを発表した。佐藤学長は「ガイドラインは、『著者が論文の全てに関わっていないと著者表記はダメ』と、オーサーシップのあり方を明確にしており、本学では研究不正への対応を直ちに徹底してきた」と力説する。
一方、今回の問題で同大研究推進部は佐藤学長から聞き取りをしたが、「ガイドラインに基づいた書面での告発が行われていない」などとして調査をしない方針だ。佐藤学長は「自分として(この問題への)対応は時間をもらい、冷静なタイミングで考えてみたい」と締めくくった。【松山彦蔵】