「ホステスちゃうわ!」女子大生ぶちキレクレームの嵐 カラオケ強制参加100点、声小さいと減点…元准教授トンデモ成績評価

【関西の議論】
「ホステスちゃうわ!」女子大生ぶちキレクレームの嵐 カラオケ強制参加100点、声小さいと減点…元准教授トンデモ成績評価
産経新聞 2016.7.5 10:15更新

 カラオケに参加した学生は全員100点。でも、発表時の声が小さい学生は減点−。神戸の私立女子大で、そんな信じがたい成績評価が行われていたことが明らかになった。きっかけは、問題行動を繰り返して女子大を解雇された元准教授が、運営法人を相手に地位確認などを求めた訴訟。カラオケボックスでのテスト実施などを「裁量の範囲内」と主張したが、神戸地裁は6月、「教員としての適格性の欠如は矯正不可能」として元准教授を�狒缶滅堊吻瓩箸垢詒酬茲鮓世づ呂靴拭�「大学全入時代」といわれる昨今、学生の学力低下が叫ばれるが、教員の質の低下も深刻かもしれない。

「どのように成績を付けているのか」

 まずは地裁が認定した事実や訴訟記録をもとに、元准教授が解雇された経緯を振り返ってみる。

 平成26年4月。神戸市内のある女子大に、前年度に開講された英語能力テスト「TOEIC」の対策講座をめぐり、成績評価への不服を申し立てる学生からの投書が届いた。

 《テストに出席していない子が単位を取れて、私は落とされました。授業中に当てられた際、声が小さければ欠席扱いにされていました。最後の授業はアイスパーティーをして終わりました。どのように成績を付けているのか不明です》 

 講義を受け持っていたのは文学部の男性元准教授。7年に女子大の専任講師になって以降、20年近くにわたって英語を教え続けてきた50代後半のベテラン教員だった。

講義の発表で「はぁ?」連呼

 大学は早速、問題調査検討委員会を設置し、実態調査を始めた。すると間もなく、今度は別の学生2人から、開講中の講義の手法を批判する投書が立て続けに届いた。

 《講義中に問題の解答を教えてもらえません。後期の講義もあの人が担当だと思うと、ぞっとします》

 《はっきり聞こえる声量で発表しているのに、「はあ?」を連呼される学生が何人もいます。先生が授業妨害をしているようにしか思えません》

 委員会は6月にかけて講義の受講生と元准教授から聞き取り調査を実施。そこで明らかになったのは、恣意(しい)的な成績評価や指導法だった。

 元准教授は、予習をしていないと打ち明けた学生を欠席扱い▽発表時の声が小さい学生を減点▽成績はテストの結果を加味せず、授業への取り組みのみで評価▽発表時の声が小さい生徒に侮辱的な言葉を連発−といった言動を繰り返していたという。

 調査の過程で学生から「授業を受ける気になれない」という声が相次いだため、大学は元准教授を講義の担当から外した。

 元准教授はその後、賞罰委員会の審議対象となり、9月には理事会が「勤務状態が著しく不良」として懲戒解雇処分を決めた。

 元准教授は13、18年にも同様に不適切な言動で停職処分を受けており、大学側が悪質性を重くみた結果だった。

「スナックについてきたら点数あげる」

 実は13、18年の停職処分も学生からのクレームがきっかけだった。

 13年の処分理由は、12年度前期の「基礎演習」のテストを神戸・三宮のカラオケボックスで実施した、というもの。

 元准教授は受講生に「欠席すると0点」と告げて出席を強要。英語の歌を歌いきることを課題としたにもかかわらず、途中で「日本語の歌の点数を評価点にしてもいい」と方針転換した。「カラオケを歌った学生全員に100点を与えるつもりだった」(地裁判決)という。

 さらに、同年度後期の授業でも、1次会の夕食、2次会のカラオケボックスでのテストへの出席を半強制的に求めたほか、スナックで開催予定の3次会の出席者に成績を加点することをほのめかした。

 《カラオケでのテスト費用は自己負担です。どうしてテストを受けるためにわざわざ4千円ぐらいのお金を払わなければいけないのでしょうか》

 《生徒をキャバレーのホステスか何かと勘違いしていらっしゃるのではないでしょうか。「僕の行きつけのスナックについてきたら点数をあげる」とおっしゃいました》

 当時、大学には学生からこんなクレームが多数寄せられたという。

 一方、18年の停職処分は、「対照言語学」の講義中に「出血大サービス」として10点だった問題を突然20点にするなどの成績評価をしたほか、出張旅費を不正受給したことなどが処分理由だった。この際は、学生から《点数の付け方が適当だ》という�犢霹��瓩�あったという。

欠席者に100点評価も…

 このような問題行動の数々により解雇された元准教授だったが、26年11月、「処分に納得がいかない」として大学の運営法人を相手取り、地位と処分無効の確認や慰謝料など350万円の支払いを求める訴訟を起こした。

 訴状では、大学が問題行動と認定した事実の多くは「教員としての裁量の範囲内か、あるいは軽微な非違行為」であり、「解雇によって社会的名誉が失われ、他の大学に雇用されることが事実上不可能になった」と主張。準備書面では、大学側の処分に対する反論を次々と展開した。

 まず、カラオケボックスでのテスト実施について、英語のリズムを習得する目的で歌を歌いきるという課題を出したが、大学には自由な選曲をしてもらうための設備がなかったと説明。「出血大サービス」発言については、学生が意欲的に授業に取り組むための動機づけにすぎないとした。

 さらに、講義時に予習の有無や声の大小で評価を変えたことについては、「声が小さく、予習をしておらず、授業に参加していないと思われる場合に限って1点減点した」「予習をしていない学生は欠席扱いしたわけでなく、授業の参加点6点を与えなかったにすぎない」とした。

 これに対し、大学側は学生の証言や投書を武器に徹底抗戦。元准教授が学生の単位認定にあたり、講義に毎回出席した学生を減点する一方、講義を欠席したことがある学生を100点と評価したケースがあったことなどを例示し、「恣意的な成績評価は明らかだ」と強調した。

司法が�狡郷標��疊酬�

 元准教授本人への尋問などを経て迎えた今年6月の判決。神戸地裁は、元准教授の姿勢を辛辣(しんらつ)に批判した。

 地裁は、25年度の講義をめぐり、一部学生を「不当に扱っていた」と認定。大学から繰り返し処分を受ける元准教授について「学生に配慮をすることがまったくできず、学生との間に信頼関係を築くことができない教員だ」と指摘した。

 その上で大学側の解雇処分の妥当性を検討。「教員としての適格性の欠如は矯正が不可能な状態にある」ことを根拠に解雇には正当な理由があるとし、元准教授の全ての請求を退けた。

 訴訟では、大学側の証拠資料として《何のために学校に行っているのかバカバカしい。早く先生をクビにしてください》と訴える学生の投書も地裁に提出された。

 元准教授は判決を不服として控訴した。前代未聞のバトルの行方が注目される。

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