「異常だった」園児への暴行慢性化…まるで“帝国” 元副園長を追起訴

「異常だった」園児への暴行慢性化…まるで“帝国” 元副園長を追起訴
西日本新聞 2019/12/26(木) 9:54配信

 福岡県宗像市の私立認可保育所「日の里西保育園」の元副園長による傷害事件で、福岡地検は25日、園児への傷害罪で元副園長清原こづえ容疑者(41)を追起訴した。当初は清原被告の厳しい指導に理解を示す保護者も多かったとみられるが、次第に誰も逆らえない「帝国」(元職員)に変貌。園児らへの行き過ぎた指導や暴行は慢性化し、行政の監査を受けても一向に是正されなかった。専門家は「行政の機能を強化するべきだ」と訴える。

 園児の着替えをストップウオッチで計る清原被告。制限時間を超えると、体操の一環「ブリッジ歩き」を命じた。手のまめがつぶれていてもお構いなし。軍隊のような運動会の練習を、泣きながらこなす園児もいた。「異常だった」。保護者は口をそろえる。

 清原被告は2011年に副園長に就任し、幼児教育法「ヨコミネ式」を本格的に導入。「足し算と引き算、読書もでき、小学校でよく褒められた」。数年前に子どもが卒園した別の保護者は指導を評価する。一方、複数の孫が園に通った女性は「園長から主導権が移り、元副園長の指導が年々ひどくなった」と話す。

「園で起きたことは言うな」園児にも口止め

 捜査関係者は「園長も見て見ぬふり。教祖様だった」。園児の前で度々、保育士を罵倒した。保育士はご機嫌うかがいをするようになる。10年以降、退職した保育士は60人を超えた。

 「園で起きたことは言うな」。園児には口止めもしていた。「逮捕され、やっと子どもから『たたかれていた』と聞いた。子どもに申し訳ない」。保護者の多くは今も心を痛めている。

「園に不満があっても、仕事もあり簡単に転園できなかった」

 宗像市には園を巡る苦情や相談が16年度以降40件あり、うち11件が清原被告に関するものだった。同年3月、県と市が特別指導監査で「大声や激しい口調で園児を怒る行為があった」と認定。保護者からの苦情や相談は、園が設置する「第三者委員」に報告するよう求めたが、17年から委員を務める一人は「報告はなかった」と証言する。

 市幹部は市議会12月定例会で、苦情や相談に「一件一件、適切にでき得る対応や指導を行った」と答弁。しかし保護者は「行政は動かず、何も変わらなかった」と受け止めている。市の待機児童は15人(今年10月現在)、希望の保育所に入れない「入所待ち児童」は157人。「園に不満があっても、仕事もあり簡単に転園できなかった」。悩んだ保護者は少なくない。

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 待機児童問題を背景に保育の受け皿づくりが進むものの、保育の質を評価する基準や指標はない。行政の監査も機能しなければ、保護者は安心して子どもを預けられない。

 保育園の問題に詳しい危機管理コンサルタントの脇貴志さんは「行政は監査を実施し『指導した』と説明するが、効果も確認するべきだ。改善しなければ問題の法人を運営から外す強い措置もあり得る」と指摘。その上で「保育園の監査を行う担当者を専門職にし、長期間対応できるようにするなど体制を強化するべきだ」と提言する。

 同園の代理人弁護士は「特別指導監査中なので回答は差し控える」としている。 (木村知寛、古川大二)

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