修学旅行費は差額返還されず、寮の給食費支払いも遅れる高校…混乱収まらずスト1か月
読売新聞オンライン 2022/6/11(土) 7:10配信
教職員が給与の未払いなどを理由に授業のストライキを起こした(和歌山県日高川町)で、給与以外にも多額の未払いや支払い遅れが起きていることが学校関係者への取材でわかった。運営する学校法人南陵学園(静岡県菊川市)は経営難から第三者への事業の引き継ぎを目指しているが、難航している。11日でストから1か月となるが、混乱は収まっていない。
敷地内にある学生寮で1日3食を提供している給食会社(和歌山県田辺市)によると、昨夏以降、月約450万円の支払いが度々遅れているという。
高校の生徒約170人の多くは遠隔地に自宅があり、うち約140人は学生寮で生活している。4月分の代金は所定の5月末までに支払われず、学校法人に督促したところ、300万円は直後に支払われたが、残り150万円は9日まで遅れた。
経営者の男性(45)は「育ち盛りの生徒たちに食事を提供しないわけにはいかない。早く学校運営が安定してほしい」と話した。
学校法人は5月末、私立学校の教職員の年金や保険にあたる「私学共済」の掛け金について、給与から天引きしていたにもかかわらず、13か月以上滞納していることを教職員に文書で明らかにした。私学共済を運営する「日本私立学校振興・共済事業団」によると、13か月以上支払いが滞ると、人間ドックなどを利用する際の補助制度が利用できない。ある教員は「給与から天引きしておいて、未払いとは信じられない」と憤る。
また、ある3年生の保護者によると、昨秋の修学旅行で行き先を海外から県内に変更したことで生じた費用の差額(1人約5万円)が返還されていないという。この保護者は「返さない理由について全く説明がない。こんな状況で、子どもたちは無事卒業できるのか」と不安を口にした。
高校の定員は3学年で360人だが、在籍しているのは半分以下。経営難の影響が次々に表面化している。
学校運営 引き継ぎ難航
学校法人は、自力での学校運営を断念し、第三者に学校を引き継ぐ方針だが、思惑通りには進んでいない。
小野和利理事長はスト後に教職員や保護者らに送った文書で「5月23日に理事会を開いて第三者へ事業を引き継ぎ、理事長を退く」としていたが、理事会は開かれなかった。当時想定していた相手との交渉は決裂し、別の引き継ぎ先から、事業継承に伴う寄付金を6月10日に支払うとの約束を取り付けたが、この日は入金がなかったという。
法人の代理人弁護士は「大変遺憾。事業の継承や未払い金については、今後綿密に検討したい」としている。
教職員の一人は「心配がないと言えばうそになるが、我々が動揺しては生徒たちも不安になる。無事に事業が引き継がれると信じ、日常を取り戻せるよう努力したい」と話した。
5月24日に学校法人への立ち入り検査を行った静岡、和歌山両県は、法人に対して何らかの指導を検討している。私立学校法では、法人の所在地の都道府県は、学校法人に必要な措置を取るよう命じることができ、学校法人が従わなければ、役員の解任勧告や法人の解散命令も可能だ。
文部科学省の担当者は「生徒が学べる環境を確保することが何より重要。両県が連携して適切な対応を取ってほしい」としている。
経営難の学校法人を巡っては、元理事長による法人資金の横領事件が起きたが運営していた明浄学院高校(大阪市阿倍野区)が、法人の民事再生法適用に伴い、今年4月に大阪府茨木市の学校法人に移管された例がある。