“必要ない!” “使えない!” 部活顧問の暴言やパワハラ 不適切な運営でいじめ… 「ブラック部活」問題 自殺者も【報道特集】
TBS NEWS DIG Powered by JNN 2023/1/21(土) 9:01配信
「必要ない!」「使えない!」といった部活顧問による暴言やパワハラで、生徒が追いつめられる「ブラック部活」。不適切な部活運営が一因でいじめが発生し、自殺につながるケースもあります。「ブラック部活」をどうすればいいのか、取材しました。
■「応援したくなるような試合じゃなかった」娘がノートに残した顧問の言葉
名古屋市に住む齋藤信太郎さん。齋藤さんは、背景に「顧問の教員の不適切な対応があった」と言う。
齋藤信太郎さん
「一人だけ後から転校してきたので、ユニフォームもみんなと違う服を着ていて、一人だけ目立っていた」
小学校卒業式での華子さん
「齋藤華子。将来の夢は美容師になることです!」
小学校の卒業式で将来の夢を語った華子さん。中学に進学すると、9月に転校。11月、ソフトテニス部に入った。それからわずか2か月後のことだった。
齋藤信太郎さん
「なんでうちの子だけいないんだろう・・・」
それは、冬休みを利用した正月合宿が始まる日の朝だった。
齋藤信太郎さん
「(手すりに)この子の足跡が残っていたので、このまま真下ですね。(自転車置き場の屋根が)ちょっとへこんでいると思います。当時は1月なので、その時間はまだ真っ暗。何を思って暗い街を見ていたのかなというのは、今も分からないです」
今も納骨できず、齋藤さんはネックレスに華子さんの遺骨の一部を入れて常に身に着けているという。
ソフトテニス部は、県の大会で準優勝したこともある強豪。 一方の華子さんは、初心者だった。
村瀬健介キャスター
「特にソフトテニスの部活について、娘さんには負担があった?」
齋藤信太郎さん
「最初に娘が部活を選んだときに、持ってきた部活ルール表を見て、A4用紙1枚にびっしりのを見て、引いたのは覚えています」
ルールが書かれたメモには、30を超える部活の決まりがあり、中には・・・
『先生方や先輩の前や後ろを通るときは、「失礼します」「すいません」と一言かける』
『部活を休んだ場合、その日みんなが内周を走っていたら3周たまる』
1回休めば、その分を、次の練習で走らされるというルール。
齋藤さんによると、顧問は熱心で“勝利至上主義”。部員間の関係は円滑ではなく、華子さんの同期8人が次々と退部した。ある部員からは「他の部員に陰口を言われた」と相談したのに顧問は「嫌だから止めてくれないかと言ったらいい」と言うだけだった、という証言も出た。ソフトテニス初心者の華子さんも、11月に入部後、すぐにいじめられるようになった。
華子さんが他の部員に練習相手を頼んでも、手伝ってくれず無視されていた。それでも華子さんは一日でも早く、みんなに追いつこうと頑張っていたという。
そして12月、ダブルスの試合では・・・
齋藤信太郎さん
「不慣れな試合に出て、本人は一生懸命やっていたと思うんですけど。当然ミスしますよね、初心者だし。それに対して娘が、ごめんね、ごめんね、ごめんねって何度も言ってたと。その試合の後かな、娘の部活の顧問の先生が娘に声をかけているようですけど、“応援したくなくなるような試合”だったと」
華子さんがつけていた部活ノートに、顧問のその言葉があった。
『負けそうになった時に負けオーラが出ていて、勝とうとする気持ちがあまり見られない。あまり応援したくなるような試合じゃなかった』
続けて「勝てる可能性はあるから最後まで諦めないこと!」という言葉もあったが、齋藤さんは、“応援したくなるような試合じゃなかった”という言葉が、娘を傷つけたのではないかという。
齋藤信太郎さん
「顧問の先生曰く、激励のつもりでかけた、みたいなことを言われているようですけど。13歳の女の子が、恥ずかしい思いをして一生懸命試合に出て、しかも負けて、顧問の先生からそう言われて、よし明日から頑張ろうと思いますか? 顧問の先生の言った一言っていうのは娘の心に突き刺さったと思う」
顧問によるその後のフォローもなかったという。
齋藤信太郎さん
「ついてくる子はついてきたらいいし、ついてこれない子は切り捨てちゃうみたいな話。切り捨てられた子は誰がフォローする? 誰もしない。それはやっぱり非常に大きな問題だと思いますね」
村瀬キャスター
「娘さんが参加された部活はそういう部活だった?」
齋藤信太郎さん
「1人でも多く、誰かを蹴落とさないと、レギュラーの枠に近づけない。やっぱり娘が望んでいたのは違う環境だったんだと思います」
華子さんは、試合の2週間後、自殺した。第三者委員会によると、自殺の一因は部活でのいじめ。部員間の関係悪化の背景には、顧問の部活運営の問題があると指摘した。
なぜ、ソフトテニス部の問題は見過ごされてきたのか。同じ学校に勤めていた教員が取材に応じた。
同じ学校に勤めていた教員
「強豪の部活動については口を挟むのが難しいという現場の状況はあります。どうしても遠慮するところがあります」
部活での好成績は、学校のイメージアップにもつながり、校長らも、指導法に異議を唱えにくかったのではないかという。また、近年問題になっている、教員の長時間労働もブラック部活を生む原因の一つだと話す。
同じ学校に勤めていた教員
「先生たちの長時間の労働、長時間労働して自分自身の人権に疎くなってしまうと、子どもだけじゃなくて、職場の同僚や他者に対しても、人権に疎くなってしまうという裏表の関係にあるのでは」
■殴る蹴るではなく…“罰走”や“精神的な痛み”を与える指導
専門家は、暴力が禁止される中、ブラック部活の中身は変化しているという。
日本体育大学 南部さおり 教授
「体罰、いわゆる殴る蹴るではなく、体を痛めつけるような指導をするということが傾向としてあります。例えば、罰走ですね。試合で負けたからということでグラウンドを何十周も追加で走らせるなど、そういった形で痛みを与えるっていう方法に変わってきたんじゃないかなということがあります。
それから精神的に痛めつけるような言葉を投げかけるということも、非常に目立ってきています」
背景には、手段を選ばず、勝てばいいという顧問らの姿勢があるという。
日本体育大学 南部さおり教授
「大きな大会で成績を残すということが、ひいては生徒のためにもなるし、学校のためにもなるし、保護者のためにもなるというふうな考えによって、どんどん推し進められていくということがあるんじゃないかと思います。結果を残さなければならないというふうに顧問が思う」
■体罰・パワハラ的指導の監督 意識を変えさせた10年前のできごと
鹿児島県立川内高校。県内有数の進学校だが、一方で、部活動も盛んだ。中でも強豪のバスケットボール部。その指導法が注目されている。
鹿児島県でウナギの養殖業を営む田中俊一さん。田中さんは、バスケット部の監督だ。この学校では、教員の負担を減らす意味でも、一部の部活を外部指導員に頼っている。30年間、指導してきた田中さん。以前は、体罰を交え、パワハラ的な指導をしていたという。
田中俊一 監督
「実際、私も昔は、厳しい指導がありました、体罰も。絶対しなきゃダメだろう!というネガティブな発想は確かにあった。“何でいかないんだ!”という、そういう表現ですよね」
ところが10年前、田中さんの指導法を変えさせる事件が起きた。「なぜ僕だけがあんなにシバきまわされなければならないのですか?」などと書かれた顧問への手紙が見つかった。
田中俊一 監督
「僕も、本当にこれじゃいかんなという意識にさせられたんですよね。もう絶対にやっちゃいけないと思いました。ダメだから怒るんじゃなくて、もっと違う方法はないかなという考え方、そこが大事だと思います」
田中さんは、体罰やパワハラ的な指導をやめた。練習は、平日1時間半、休日2時間半と、短時間に。週1日の休養日も設けた。そして何より、生徒の自主性を重んじる指導法に変えた。
声掛けは最低限に。自分のプレーを振り返るための問いかけにできるだけ絞る。そうすることで、部員たちが自ら学び、成長できるようになったという。
バスケ部キャプテン
「練習でダラっという時間帯が一日で必ずどこかあると思うのですが、誰かが声を出して、もう一回集中し直して、質の高い練習を取り組んでいます」
バスケ部は毎年のように、県大会の優勝を争っている。
田中俊一 監督
「子どもたちが自分たちで取り組むということが一番大事。子どもたちがしっかりすればいい。しっかり目標を持って、この練習でいいのかな? この状況で今のがベストだったのか? そりゃ失敗はしますよ。失敗をいい方向にさせていくのが指導者の仕事ですよね」