<ボート転覆>救助の高校生、寒さに震え
毎日新聞 2012年12月26日(水)13時35分配信
寒空の下で何があったのか。千葉県東庄町の黒部川で26日午前、34人の高校生が投げ出されたボートの転覆事故。救出された生徒たちは、毛布にくるまりながら寒さに震えた。合宿に参加していた千葉県や茨城県の高校では、教師たちが事実関係の確認に追われた。
東庄町などによると、事故当時、黒部川では複数の高校から生徒が参加して強化合宿が行われており、1人乗りの種目「シングルスカル」の練習をしていた35艇前後のボートが転覆した。投げ出された生徒らのうち、13〜14人が町役場に運ばれ、毛布にくるまり温かいそばを食べて暖を取っているという。
一方、東庄町の国保東庄病院には高校生2人が搬送されたが、病院によると「入院するレベルではない」。香取市の国保小見川総合病院にも救助された生徒4人が搬送されたが、「4人ともずぶぬれで低体温気味だが、意識ははっきりしている」という。
合宿に参加していた千葉県立小見川高校によると、県教育庁主催のジュニア強化事業の合宿が25〜28日、香取市にまたがる黒部川で行われており、同校1〜2年のボート部の生徒5人も参加した。顧問の男性教諭(55)が引率しているという。
同校から現場までは車で十数分で、ボート部が普段から練習場として使用していた。教頭は「普段は強風の時にはこぎ出さないなど、安全管理を徹底していた。最近では事故があったとは聞いたことがなく、驚いている。報道しか情報がなく、教員を安否確認のために急行させたところだ」と話した。
現場近くの会社に勤める女性は「消防とか救急車の音がものすごく鳴っていたので、何ごとかと思っていたら、テレビで転覆事故と知った。今朝から風が強かったので、その影響かもしれない」と心配そうに話した。別の女性によると「11時前ごろ、突風のような強い風が吹いた」という。
近くの農業、鈴木清喜さん(72)が午前11時ごろ現場近くを通りかかると、若者たちがボートを5隻ほど岸に引き上げていた。鈴木さんは「今日は風が強くて白波が立っていた。ボートの練習はよくやっていたが、事故があったのは初めてではないか」と話した。
現場から約200メートルの距離に住む多田廣美さん(62)は「午前9時過ぎから強い西風が吹いてきた。黒部川は結構深く、近くでは2年くらい前にも釣り人が落ちる事故があった」と語った。石毛栄次郎さん(75)は「投げ出された高校生も水が冷たかったろう」と気遣った。
千葉県香取市スポーツ振興課によると、黒部川は直線が長く続くため、レガッタやカヌーなどの大会やボート部の合宿などによく利用されている。今年も年度初めに関東地方レベルの大会が開かれたといい、職員は「これほど大きな事故は今まで聞いたことがない。部活の合宿と聞いているので、気象条件で大丈夫と判断して練習を始めたのだと思う」と話した。