<大津いじめ・同級生送検>遺族「根絶への一歩に」
毎日新聞 2012年12月27日(木)20時15分配信
極めて異例の学校への強制捜査から5カ月。滋賀県警は27日、大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺した問題で、男子生徒をいじめたとされる同級生の書類送検などに踏み切った。大津の中学生自殺は社会に大きな衝撃を与えた。「捜査の結果がいじめと自殺の根絶への第一歩になることを望む」。自殺した生徒の父親は訴えた。
自殺した男子生徒の父親(47)は大津市内で記者会見し、「丁寧な捜査をした県警捜査員、捜査に協力してくれた360人の同級生らと保護者に感謝する。口をきくことのできない息子に代わり必死に捜査してもらった。息子は本当に喜んでいると思う」と何度も声を詰まらせ、頭を下げた。
父親は午後1時半から県警大津署で説明を受けた。立件内容が暴行など3容疑13件だったことについては「被害者がいない状況で、それが精いっぱいなのでは」と語った。自殺直後に3度の被害届の受理をためらった県警の対応にも「去年捜査を始めるのと、1年近くしてから始めるのでは目撃者の記憶が薄れるのは当然だが、必死に思い出してもらう捜査をした」と理解を示した。
大量の捜査資料についても「教育現場で、いじめと自殺の根絶に向けた第一歩として積極的に活用されることを強く望む」と求めた。
同席した代理人の石川賢治弁護士は「初動の遅れが結果にどの程度影響したか分からないが、最初から捜査すべきだった」と問題点を指摘。一方で「いじめは犯罪。必要があれば警察は介入すべきだ。同級生からの聞き取りも必要。今回の捜査は全国のモデルケースになるべきだ」と評価した。
一方、いじめ問題を巡る情報隠しが指摘され、批判を浴びた大津市教委。沢村憲次教育長が任期満了で退任し、後任は不在。教育長代理を務める松田哲男教育部長は書類送検を受け、「(立件を)重く受け止めて、いじめを許さない学校作りに努力していきたい」と沈痛な表情で述べ、「県警の強制捜査に至る前に、きちんとした対応をすべきだった。早期発見、未然防止ができなかったことを反省している」と語った。また、大津地裁で係争中の損害賠償訴訟への影響については「現段階ではわからない」と発言を控えた。
越直美市長も「立件されたことを重く受け止めている。ご遺族には改めて心から哀悼の意を表したい。再発防止策をしっかり講じていく」と硬い表情で話した。【千葉紀和、林哲平、前本麻有】