<大阪産業大学>やらせ受験 内部からも批判
毎日新聞 2013年3月17日(日)9時38分配信
大阪産業大学(大阪府大東市)の2009年度入試を巡り、付属高への不透明な受験依頼と、生徒への謝礼が発覚した。大学と付属高校は入学する意思の乏しい生徒をあえて受験させ、多くは合格していた。こうした操作で門戸が狭まり、不合格になった一般受験生がいる可能性もある。「事実なら受験生への裏切りだ」と内部からも批判が出ている。【原田啓之、藤田剛】
09年1月ごろ、付属高の教諭は成績優秀な生徒数人を教室に集め、こう切り出したという。「偏差値を上げるために受けてくれ。なるべく多く受けてほしい」。大産大経営学部への受験依頼だった。
その時期、生徒の多くは推薦入試などで進学先が決まっており、経営学部を受ける必要はなかった。「どうせ暇やろ。勉強がてらに受けてほしい」。教諭は、合格すれば試験1回につき5000円を謝礼として渡すことも約束し、生徒らは承諾。3回ある一般前期の入試を全て受験した生徒もいたという。入試が終わった後の4月ごろ、教諭は既に卒業していた生徒らを学校に呼び出し、謝礼を現金で渡した。
教諭に指示した当時の教頭は取材に「大学の担当部局である入試センターから、必要な延べ受験者数を伝えられた。前期試験が終わった時点で『だいぶ片付きました』と礼を言われた」と証言する。
大学が高校側に依頼したとされる08年末、経営学部の入学者数は想定以上に増え、補助金カットの不安が出始めた。当時の大学幹部は「入試センターから『厳しい』という話を聞いた。(補助金カットまで)ぎりぎりで、大変だというのは分かっていた」と話す。
「やらせ受験」とも言える行為に対し、大産大のある教授は「意図的な操作で合格ラインが上げられ、不合格になった受験生がいるだろう。大学は謝罪すべきだ」と憤る。付属高の元幹部も「必要ないのに、生徒に繰り返し受験させるなんてあり得ない。大学・高校は徹底的に調査して、うみを出すべきだ」と話す。
◇立命大は08年に無試験で転籍
大産大は09年度入試で、なぜ入学者数の調整に苦慮したのか。少子化に伴う学校間競争の激化を背景に、新入生の早期の囲い込み合戦と入試の複雑化が見えてくる。
大産大の入試パンフレットによると、09年度の入試は、一般▽スポーツ推薦▽文化系クラブ推薦▽AO▽ディベート−−など20種以上に及んだ。経営学部では、一般入試が始まる2月までに入学者が定員を大幅に超え、補助金カットの恐れが出ていた。関係者は「想定よりも集まりすぎた」と話す。
一方、文部科学省は教育の質を維持しようと、定員管理を厳格化している。補助金が不交付になる基準は大産大の場合、08年度は入学定員の1.4倍だったが、12年度は1.25倍まで下がった。
補助金のカットを免れようとして不正が発覚したケースもある。立命館大(京都市)では08年、生命科学部が定員を大幅に超えたため、一部の新入生を無試験で他学部に転籍させたことが発覚。大学の管理運営に問題があったとして、08年度の経常費補助金を25%(約15億円分)カットされた。【原田啓之】
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大産大で「やらせ受験」 補助金受給目的、付属高生徒に依頼か
産経新聞 2013年3月17日(日)19時36分配信
大阪産業大学(大阪府大東市)が平成21年度の入試をめぐり、付属高校(大阪市城東区)に対して成績上位の同校生徒に経営学部を受験させるよう依頼し、生徒に受験1回あたり5千円の謝礼を渡していた疑いがあることが17日、大阪府などへの取材で分かった。
内部告発をもとに発覚。国からの補助金がカットされる定員超過を避けるため、入学意思のない生徒で合格枠を埋める狙いがあったとされ、報告を受けた府や文部科学省が調査に乗り出したほか、大産大も第三者調査委員会を設置する。
国の「私立大学等経常費補助金」に関し、当時は入学者数が定員の1・37倍以上になった学部には支給しない規定があった。
告発によると、大産大経営学部の21年度の定員は465人で、補助金受給には入学者数を637人以下に抑える必要があったが、20年12月までに、推薦入試などで600人近くの入学が決定。一般入試の募集定員は78人としており、入学者総数が637人を上回る見通しとなっていた。
このため、大学側は当時の付属高教頭に対し、入学意思がなく成績優秀な生徒に経営学部を受験させるよう依頼。元教頭の指示を受けた担任教諭2人が3年生9人に受験を依頼し、一般入試を日程別に延べ数十回受験。合格した生徒に1回あたり5千円が渡された。
依頼を受けた合格者で実際に入学した生徒はなく、大学側は入学者数を意図的に抑制して基準を満たした結果、21年度の補助金約10億円を受け取ったという。
大産大の幹部は「関係者に事情を聴き、事実確認を進めたい」としている。