朝鮮学校補助、神奈川県が事実上の打ち切り…復活は困難
産経新聞 2013年3月18日(月)12時27分配信
神奈川県の黒岩祐治知事が朝鮮学校補助金の平成25年度当初予算案への計上を見送って1カ月。北朝鮮による核実験を理由にした事実上の打ち切りに、学校や支援団体などは「核実験と生徒は関係ない」と撤回を求めている。交付の継続から一転、唐突な方針転換にみえるが、県は2年も前から教育内容に条件を付けてきた。(寺田理恵)
■学校「核と関係ない」
1月、県庁知事室前で中年男性が1人、職員と押し問答をしていた。国が昨年末に朝鮮学校を高校授業料無償化の対象外とする方針を示した一方で、県が補助金交付を続けることに怒りが収まらない様子だった。
交付に反対する意見は1月中に737件が電話やメールなどで県に寄せられた。黒岩知事が「学校を体を張って守ってきた」と吐露した背景には、こうした声もあったかもしれない。
北朝鮮による核実験の翌日の2月13日、黒岩知事は5校分計約6300万円の計上を見送る意向を表明。「核実験を強行した国の強い影響力の中にある学校への補助は県民感情として認められない」と強調した。
これに対し、学校側は「核実験と学園は何の関係もない」と撤回を要請。神奈川人権センターや多数の労働組合など84団体(2月21日現在)も「(朝鮮学校や生徒は)核実験に責任を持たない」と声を上げた。
■知事「子供に罪ない」
公金支出をめぐる議論で問われてきたのは、北朝鮮との結び付きの強い在日本朝鮮人総連合会の学校運営や教育内容への影響である。黒岩知事は北朝鮮と朝鮮学校を分けて考え、交付を続けてきたと説明している。核実験を理由にした決断は整合性がないようにもとれるが、「子供たちに罪はない」と議会で答弁しており、核実験は決断の引き金だろう。
朝鮮学校への地方自治体独自の補助金は昭和43年、美濃部亮吉都知事が朝鮮大学校を各種学校として認可して以後、広がった。
多数の自治体が現在も計上を続ける中、県が見直しに着手した契機は、民主党政権下で判断が先送りされた無償化適用問題だった。松沢成文前知事が平成22年11月、反日的な教育の有無を独自に調査すると宣言、12月に自ら学校を視察した。
教科書記述の「日本当局は《拉致問題》を極大化し…反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げ」と、大韓航空機爆破を韓国の「捏(ねつ)造(ぞう)」とした部分を問題視。学校側から25年度の教科書改訂時に見直しを働きかけるとの回答を得て、交付の継続を決めた経緯がある。
■教育内容を問題視
23年4月に就任した黒岩知事も、問題記述が修正されたとして継続を決めたものの、拉致問題の授業と教科書記述を条件としてきた。教育内容を問う根底には、北朝鮮の影響への懸念があったのではないか。
計上見送りに際して再開の条件を「北朝鮮の政権と一線を画してる明確なメッセージ」とし、具体的に示していない。事実上の打ち切りといえるが、県庁内には知事の決断に対して不満もくすぶっているようだ。
3月4日の県議会常任委員会で、県当局が「知事の判断を不条理で納得できない差別と子供たちが捉えている」などもっぱら朝鮮学校側の声を代弁し、論点を「生徒への差別」に誘導するかのような場面もみられた。しかし、問われているのは学校の在り方であり、懸念が払拭されない限り決断を翻すことはあるまい。
■朝鮮学校補助金をめぐる神奈川県の動き
平成22年12月 松沢成文前知事が朝鮮学校を視察。教科書の反日記述を見直す前提で交付決定
23年6月 黒岩祐治知事が拉致事件に関する授業実施などを条件に交付決定
11月 県職員と県議が拉致事件に関する授業を視察し、黒岩知事が交付決定
24年3月 県議会が当初予算案に付帯意見。拉致事件の授業継続と教科書改訂を求める
11月 県職員が拉致事件に関する授業を視察
25年2月 北朝鮮の核実験を受け、黒岩知事が当初予算案計上見送り