(朝鮮日報日本語版) 中学校の歴史教科書で深刻な左翼偏向
朝鮮日報日本語版 2013年5月31日(金)12時40分配信
昨年の教科書検定を通過し、今年の中学校1年生から教育現場で使われている歴史の教科書に、依然として左派偏向の問題が存在することが分かった。1997年に告示された第7次教育課程での「韓国近現代史」教科書や、2009年改正教育課程での高校「韓国史」教科書に続き、小学校を卒業したばかりの中学生が学ぶ「歴史」教科書にも、偏った民族主義・民衆主義史観に基づいた近現代史の記述があるというわけだ。1970−80年代の学生運動の理念と密接な関連がある「民衆史観」は、社会主義・唯物論的視点から、歴史の主体は民衆だと考え、革命的階級闘争の流れを重視している。
韓国現代史学会(権煕英〈クォン・ヒヨン〉会長)と峨山政策研究院(咸在鳳〈ハム・ジェボン〉院長)は31日昼12時30分から、ソウル・新門路の峨山政策研究院講堂で開催する学術会議「教科書問題を考える:中学校・高校韓国史教科書の分析と提言」で、こうした分析内容を公表する。
■「左翼」と「北朝鮮」側に偏る教科書
発表論文で中学校の歴史教科書を分析した権煕英・韓国学中央研究院教授は「教科書が、人類の普遍的価値や憲法的価値ではなく、特定の思想的価値を中心とする構成になっており、韓国が自由民主主義体制で生まれたという事実そのものを否定している」と指摘した。「共産主義・資本主義」「親日・反日」「民主・ファッショ」という架空の対立が、教科書の歴史観になってしまったというわけだ。
こうした歴史観は「左派を擁護する記述」という形で随所に表れている、と権教授は語った。光復(日本の植民地支配からの解放)直後の政治勢力の中で、呂運亨(ヨ・ウンヒョン)を「合理的かつ理想的な独立国建設」のため努力したと前向きに描写する一方、韓国民主党(韓民党)については「植民地時代の地主・資本家などが中心になって結成」されたという偏った見方をしている。また米ソの軍政について「米軍は直接軍政、ソ連軍は間接統治」を行ったと記し、事実をゆがめている。
左翼が信託統治反対から賛成に立場を変えたことをめぐり、一部の教科書には「臨時政府の樹立に疑義があり」そうしたという擁護的な記述も見られる。韓国政府樹立の過程をめぐっては「南だけの単独政府を樹立しようとする動き」を強調しながらも、北では既に1946年2月の段階で実質的な政府が形成されていたことを記述していない。
また、これらの教科書には▲6・25(朝鮮戦争)は北朝鮮・ソ連・中国がたくらんだ戦争だったという事実を記さず国連の介入で国際紛争に拡大したかのように記す▲北朝鮮の経済的失敗の原因をほとんど「援助の中断」「自然災害」など外的要因によるものとする▲韓国海軍哨戒艦「天安」爆沈事件や延坪島砲撃事件などについてはほとんど沈黙している―などの偏りが見られる、と権教授は指摘した。
■武装独立運動を優遇、外交独立運動は軽視
キム・ドヒョン統一未来社会研究所研究員は、中学校歴史教科書の近代史記述に▲時代の変化を反映しない閉鎖的な民族主義▲侵略と抵抗という二元的アプローチ▲一国史的な民族・民衆運動史中心―という問題点があると指摘した。こうした歴史観のせいで、独立協会を「外部勢力依存的」とする一方、大韓帝国は「自主的近代化のため努力した」とする、偏った記述が見られるという。
こうした歴史観は、高校の教科書で一層具体的なものになっている。オ・ヨンソプ延世大学李承晩研究所研究教授は「高校の『韓国史』教科書類は、穏健論に属する実力養成・外交独立運動について、さしたる成果を挙げられなかったと軽視したりおとしめたりする一方、武装独立戦争や義烈闘争(小組織や個人による暗殺・破壊活動などのこと)は高く評価している」と指摘した。
許東賢(ホ・ドンヒョン)慶煕大学韓国現代史研究院長は「ソ連側の文書など新しい資料の発掘により、学界では既に存立基盤を失った左派修正主義史観が、高校の『韓国史』教科書にまだ根深く残っている」と分析した。▲レーニンのボルシェビキ革命をひたすら前向きに記述する▲米国の覇権主義ばかりを強調しソ連・中国の侵略的側面は無視する▲南北分断におけるソ連の責任を軽く見る―などの偏向的態度が随所に表れているという。
権煕英教授は「少なくとも北朝鮮関連では、明確な体制的優越性がある韓国の自由民主主義体制を中心に据え、肯定的なアイデンティティーを育ててやることで、ようやく歴史的事実に符合する記述になるだろう」と語った。
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(朝鮮日報日本語版) 【社説】「南労党式」の歴史観、いまだ韓国の中学生を洗脳
朝鮮日報日本語版 2013年5月31日(金)12時38分配信
昨年の教科書検定で合格し、今年3月から韓国の中学1年生が使用している歴史教科書の大部分で、日本の植民地支配から解放された後の現代史の記述が、共産党系列の情勢認識に基づいている、と指摘する声が出ている。ある教科書は左派系の「朝鮮建国準備委員会」を立ち上げた呂運亨(ヨ・ウンヒョン)について「合理的で理想的な独立国を建設しようとした」と肯定的な表現をし、また別の教科書は、韓国民主党(韓民党)のような民族主義右派の人物について「日本統治下の資本家たち」と記述し、敵対感をあらわにした。
韓国学中央研究院のクォン・ヒヨン教授は、このように左派を建国勢力の中心と見なして美化し、右派は「歴史に反する不道徳な集団」とする見方は、解放当時の朝鮮共産党の情勢認識に根差したものだ、と指摘した。クォン教授によると、現在使用されている中学校用歴史教科書は、南朝鮮労働党(南労党)の党首だった朴憲永(パク・ホンヨン)が、解放後の政局を、共産主義を掲げる「進歩・左翼・人民陣営」と、大韓民国臨時政府などが中心となった「反動・右翼・親日派陣営」の闘争と位置付けた歴史認識を受け継いでいるという。
ある教科書は、6・25戦争(朝鮮戦争)について「戦争は南北間で始まったが、国連軍が参戦し、後から中国が介入して、ソ連も北朝鮮を軍事的に支援した」と記述している。これは6・25戦争が、金日成(キム・イルソン)主席がソ連と中国から支援についての約束を取り付けた上で、緻密な計画に基づいて始めた戦争だったという事実から目をそらすものだ。その上で、戦争を仕掛けた責任をあいまいにし、あたかも国連軍の参戦によって戦争が拡大したかのように歪曲(わいきょく)している。数百万人の同胞を虐殺した6・25戦争の主犯である金日成主席と、共犯の朴憲永を美化し、その主張に追従する歴史観が、韓国の子どもたちを洗脳しているというわけだ。
現代史教育の根本的な問題は、教科書の執筆から採択に至る過程が、左派の影響から抜け出せずにいるということだ。左派が作成した歴史教科書の採択率は中学・高校で90%を超えていると推定されている。左派が教科書を執筆し、左派の全国教職員労働組合(全教組)系の教師たちがこれを採択しているというわけだ。教育部(省に相当)は、一部の左派の歴史学者が執筆している現代史の教科書を、政治学や経済学、社会学などさまざまな分野の学者たちが執筆する方向に改めるべきだ。また、各学校が歴史教科書を採択する際、学校運営委員会が積極的に関与し、生徒たちがバランスの取れた現代史教育を受けられるよう、活発に意見を述べていく必要がある。