<東大教授詐取>実質経営の会社維持に流用か

<東大教授詐取>実質経営の会社維持に流用か 
毎日新聞 2013年8月13日(火)7時10分配信

 東京大学政策ビジョン研究センターを巡る研究費詐取事件で、東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕されたセンター教授、秋山昌範容疑者(55)が実質経営する会社が、山形県への医療情報システム導入計画を2010年に頓挫させていたことが関係者の話で分かった。同社はこれを機に資金繰りが悪化。特捜部は、教授が研究費を会社維持のために流用した疑いがあるとみており、勾留期限の14日にも起訴するとみられる。

 山形県は09年7月、県立病院の医療情報システムの入札を実施し、秋山教授が開発中のシステムを提案した大手コンサルタントが約18億円で落札した。患者の投薬情報などを即時に管理するシステムで、教授が実質経営し元妻が代表を務めるARI(エーアールアイ)社が開発に参加していた。しかし、期限までにシステムは納入されず、県は10年9月、契約を解除した。資金不足などで開発に失敗したとみられる。県の担当者は「教授の説明では魅力的なシステムだったが、完成する気配は一向になかった」と話す。

 秋山教授は同時期の09〜10年、愛媛県新居浜市でも、在宅患者の食事などの情報をスマートフォンで介護事業者と病院が共有する実証実験を総務省から4725万円で請け負った。この実験を巡っては、他にも厚生労働省などの研究費が教授側に支払われ、うち数百万円がARIに流れたとされる。特捜部は、教授が総務省から実験に必要な費用を得ていたのに厚労省にも研究費を請求し、ARIの資金繰りや私的な使途に流用したとみている模様だ。

 一方、教授側は「研究費は正当な研究の対価」と主張している。弁護人は「研究費はARIの人件費に充てられてはいるが、ARIは研究を通じてシステムをバージョンアップしている。架空請求ではない」と反論する。【吉住遊、近松仁太郎】

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