元妻切りつけた男、起訴事実を認める 被害者「人生、恐怖に支配」
産経新聞 2013年11月30日(土)11時58分配信
神奈川県伊勢原市の路上で女性(31)が刃物で切りつけられ重傷を負った事件で、殺人未遂罪などに問われた女性の元夫で塾講師の貞苅詩門(さだかり・しもん)被告(32)の裁判員裁判初公判が29日、横浜地裁小田原支部(佐藤晋一郎裁判長)で開かれ、貞苅被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。公判では、貞苅被告の殺意の強さが争点となった。
検察側は冒頭陳述で、貞苅被告が包丁を女性の首などに何回も突き刺したことなどから、極めて強い殺意を持っていたと指摘。さらに、貞苅被告が生活費を当てにしていた母親の家出に絶望して自殺を決意し、その前に女性を殺そうと思い立ったと説明した。
その上で、女性が貞苅被告からのドメスティックバイオレンス(DV、配偶者・恋人からの暴力)が原因で、離婚後もDV被害者を保護する「シェルター」に入居するなどしていた経緯を明らかにし、直接的な接触がない女性に恨みを抱いて殺意を募らせたとして、「動機が異常で、身勝手かつ無慈悲極まりない」と強調した。
検察側はその後、「私の人生はいつまでも、相手方(貞苅被告)への恐怖心に支配されることになると思う」と供述した女性の調書を読み上げた。調書によると、女性には、肉体的、精神的後遺症が出たほか、事件当時、女性と一緒に歩いていた長男はカウンセリングに通っているという。
弁護側は、自殺を決意した貞苅被告が犯行直前まで、女性に切りつけるか、養育費を渡すかで悩んでいたと主張。「最終的には被害者が死んでしまっても仕方ないと思い切りつけた」と検察側の主張する強い殺意を否定した。
貞苅被告は被告人質問で、「(女性に)逆恨みする一方、子供に対する愛情や、離婚するまでにした仕打ちに対する罪悪感から迷っていた」と当時の心境を説明。女性の殺害が目的ではなく、「傷付けることに意味があり、その結果死んでしまっても構わないと考えていた。私の記憶では1、2回切りつけただけだと思っていた」と話した。
その上で、貞苅被告は「申し訳ない気持ちです」と何度も謝罪や反省の言葉を口にした。「実の父親が母親を切りつけるという衝撃的なシーンを(長男に)見せて、一生のトラウマになる」と声を震わせる場面もあった。
起訴状などによると、貞苅被告は女性を殺害しようと今年5月21日、伊勢原市の路上で首などを包丁で数回突き刺すなどし、全治約6カ月の重傷を負わせたとしている。