京都市の繁華街である祇園、木屋町地域で客引き行為が活発化している。新型コロナウイルス禍を経て、繁華街が活況を取り戻したことが背景にある。京都府警は客引きによる誘客が、交流サイト(SNS)でつながる「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」や暴力団の資金獲得につながる恐れがあるとみて、取り締まりを強めている。 昨年11月下旬、ネオンがきらめく夜の東山区祇園地区に私服警察官の姿があった。街に溶け込むように歩いていると、男が近づき声をかけた。「セクキャバとかどうですか」「おっぱいもんだり、チューしたり」。風俗店への客引きだった。 東山署などは、府迷惑行為防止条例違反(不当な客引き行為の禁止)の疑いで男(43)を現行犯逮捕した。昨年12月中旬には、中京区の木屋町で私服警察官に客引き行為をしたとして、中京署などがキャバクラ店代表の男(41)を風営法違反容疑で逮捕した。 市内の繁華街では次々に声をかける強引な客引きが以前から目立っていた。市は2015年、祇園や木屋町など特定地域での客引き行為を禁止し、指導や勧告に従わない場合は氏名公表や過料を科す市客引き禁止条例を独自に制定。この条例に基づく客引きや勧誘行為の指導件数は、19年度の123件をピークにコロナ禍で減少に転じ、昨年度は48件まで減った。だが、本年度は4〜9月の半年間で既に40件に達している。 市の担当者は「例えば木屋町の三条―四条間は高瀬川の橋ごとに客引きがいる。市民から『客引きがいた』と連絡も来る。繁華街に観光客が戻り、客引き行為は活発になっている」と説明する。 東山署と中京署、府警本部の生活保安課は合同捜査班を組み、私服警察官の巡回を増やすなどして警戒を強めている。警察が監視の目を光らせる理由の一つは、実態がつかみにくいトクリュウの資金確保につながる可能性があるからだ。 24年版の警察白書は、性風俗店の経営や、ホストクラブでの高額請求にトクリュウが直接もしくは間接的に関わり、不当に利益を得るなど、繁華街での活動を有力な資金源にしている可能性を指摘している。府警は、客引きがこうした悪質な店へ誘客したり、客引きの対価として店側から受け取る金自体が犯罪グループの収益になったりする恐れがあるとみている。