畝本直美検事総長は19日、全国の高検や地検のトップが集まる検察長官会同で、検察による任意の取り調べでの録音・録画(可視化)を試行する方針を示した。これまでは検察による独自事件と裁判員裁判対象事件で逮捕、勾留した場合のみ義務付けられていた。検事による不適正な取り調べが相次いでいることを受けての対応で、最高検察庁は近く、対象事件や運用方法についての議論を本格化させるもようだ。 畝本総長は会同の訓示で、検察の取り調べについて「さまざまな批判を受けていることは深く憂慮すべきこと」と強調。適正な取り調べに向けた取り組みとして、「一定の在宅事件の被疑者の取り調べについて録音・録画を試行したい」と述べた。 関係者によると、最高検は任意の取り調べ全過程の可視化実現を念頭に置き、試行を経て運用面での課題や対象事件などを検討するとみられる。 取り調べを巡っては令和元年6月施行の改正刑事訴訟法で、裁判員裁判対象事件と検察の独自事件で逮捕・勾留された被疑者について、全面的な可視化が義務付けられている。逮捕・勾留された被疑者の録音・録画の実施件数は、義務化されていない事件も含めて5年度で約10万件だった。 一方で、被疑者を在宅のまま捜査する任意の取り調べの可視化は義務付けられていない。録音・録画される場合もあったが、検事の裁量で行われるため、全過程の可視化はほとんど行われていないとされる。 ただ、元年の参院選広島選挙区の買収事件では、広島市議を任意で調べた東京地検特捜部の検事が、供述を誘導していたことが発覚。最高検は5年12月、この取り調べを不適正と認定した。 東京五輪の大会運営を巡る談合事件の公判でも、広告最大手「電通」の元幹部が検事から「お前は絶対有罪」などと暴言を吐かれたと訴えるなど、任意の取り調べを巡って批判が出ていた。