【ソウル時事】韓国の憲法裁判所が尹錫悦大統領の罷免の可否に関する決定を言い渡す。 決定に影響を与えるとされる世論は罷免賛成が多数派で、直近調査では60%に上る。ただ、判事間に意見の隔たりがあるとの見方もあり、保守系判事らの動向が焦点になる。 憲法裁の判事は大統領と国会、最高裁長官によって選ばれ、指名当時の政治状況により傾向が分かれる。韓国メディアによると、現在の判事のうち3人は革新的、3人が中道、2人が保守的とみられている。 決定は判事8人の評決で行われる。保守系与党「国民の力」は、罷免に当たらないとする「棄却」や手続き上の不備があるとする「却下」に判事3人がまとまることを期待する。3月24日の韓悳洙首相の弾劾棄却決定では、保守系とされる判事2人が与党の主張に沿う形で却下の個別意見を出した。 朴槿恵元大統領の弾劾審判当時は世論の7割超が賛成で、判事全員一致で罷免を宣告した。一方、今回は弾劾反対運動も盛り上がり、与党の権性東院内代表は3月25日、記者団に「朴氏の当時と現場の世論や憲法裁の構成が異なり、棄却決定が出る可能性がある」と予測した。 当初、3月中旬と予想された宣告が遅れた背景として「判事の意見が弾劾賛成5対反対3でこう着状態に陥った」(韓国メディア)との観測も浮上。一方、革新系最大野党「共に民主党」の元幹部議員は「判事の政治的傾向を重視し過ぎて動揺しているが、朴氏の弾劾審判も保守系判事が多かった。今回も8人一致で罷免決定が出る」と期待する。 過去の弾劾審判では違憲・違法行為の重大性が明暗を分けた。憲法裁は、盧武鉉元大統領の審判で弾劾の基準について「罷免が正当化されるだけの重大性がなければならない」と判示し、訴追を棄却。一方、朴氏の審判では「国民の信任を裏切り、憲法守護の観点から容認できない重大な違憲・違法行為だ」として罷免決定を下した。 今回は主に(1)戒厳宣言の要件や手続きを巡る違憲・違法性(2)国会活動を含む一切の政治活動を禁止した布告令の違憲・違法性(3)国会の戒厳解除決議を妨げる意図(4)政治家らの逮捕指示の有無(5)選挙管理委員会への兵力投入の違法性―が争点になる。