「ブランコといえば、このホームランです」 トラ番キャップ・須藤佳裕がスマホの画面を見せてくれた。 2014年4月8日。ちょうど11年前の甲子園での阪神-DeNAで、バックスクリーンに〝突き刺した〟逆転満塁アーチの映像だった。直後、顔をゆがめるマウンドの藤浪晋太郎(現マリナーズ傘下3Aタコマ)。 人間離れした弾道を何度見せられたことか。ナゴヤ(現バンテリン)ドームで、ハマスタで、そして甲子園で。記憶に残り過ぎる、よきライバル、すばらしきアーチストだった。 日本のラストイヤーは16年のオリックス。全盛期を過ぎ、故障が多発し、ベンチを温めることが多かった。ただ、陽気な性格ゆえ、担当記者との雑談が大好き。試合に出ないが、元「偉大な助っ人」のご意見番的トークを何度も原稿にした。 ある日、ロッテの新外国人が実弾を所持して入国したことが判明し、逮捕された。 「なぜ、俺に相談しなかったんだ。日本でプレーしたドミニカ共和国の先輩を頼るべきだ」 そして、明かした秘話がある。 「俺もことし、母国を離れる際に家族に荷造りを任せていた。悪い予感がして、米国のホテルで荷を開けたら、拳銃と実弾が入っていた。そのままなら、俺も捕まっていた。慌てて捨ててから、日本に来たよ」 拳銃所持が当たり前なお国事情ゆえに苦労があるようだ。 「俺には危険を察知する能力があるから」 自慢していたが、天井落下の危険なんて、察知のしようがない。残念すぎる。 そんな球界を悲しませた訃報も「自称広末涼子容疑者」により吹っ飛ばされてしまったのは、何と表現していいのか。 「藤川監督の同級生ですよね」 なぜか、トラ番最年少・萩原翔は知っていた。「ボクは『MajiでKoiする5秒前』を唄えますよ」と入社3年目の中屋友那も言う。どうやら今でもスター?! ただ27年前は、ナンバーワンスーパーアイドルだった。 「藤川球児のドラフト1位指名の日に、メイン原稿に添える原稿はないのか?」 1998年のドラフト会議直前。デスクの注文に、思いついたのが中学の同級生の激励メッセージ。最近でも虎戦士の初勝利などで恩師や両親によるお祝いメッセージをサンスポ紙面で読まれた読者も多いのでは。身近な人物の秘話は、苦労が伝わり、グッと来る。