柔道で意識不明 埼玉県に1億円賠償命令 東京高裁
2009年12月17日20時40分配信 毎日新聞
柔道部の合宿中、顧問の教諭に体調不良を訴えたのに練習に加わるように言われ投げられて意識不明になったとして、埼玉県立越谷総合技術高校(越谷市)の元女子生徒が県に約1億5600万円の賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は17日、請求を棄却したさいたま地裁判決(08年3月)を変更し、約1億740万円の賠償を命じる原告逆転勝訴の判決を言い渡した。渡辺等裁判長は「練習を中止させ病院で受診させるべき注意義務を怠った」と過失を認定した。
原告は元柔道部員の斉野平(さいのひら)いずみさん(23)。
判決によると、当時1年生だったいずみさんは02年7月、夏合宿(5日間)に参加。2日目の練習で投げられ頭を打ち練習を休んだ。3日目以降も頭痛が続き軽い練習だけに加わったが、最終日に「最後だから参加したらどうか」と言われて教諭と組み、投げられた直後に意識を失った。
判決は「教諭はいずみさんの訴えで、頭痛、おう吐、食欲不振があったことを認識しており重大な結果を予見できた」と指摘した。そのうえで「医師の診察を受けさせず、練習参加取りやめも指示しなかった結果、2日目に生じた軽度の急性硬膜下血腫が重篤化した」と認定した。1審は教諭の証言から「いずみさんは教諭に体調不良を訴えていなかった」と結論づけたが、高裁は教諭の証言の信用性を否定した。
いずみさんは現在も県内の病院に入院し寝たきりの状態。呼びかけや音楽に時折笑顔を見せたように見えるが、会話はまったくできず、ほとんど体も動かない。判決後の記者会見で母弘子さん(50)は「『娘が頭痛を教諭に訴えていた』と1審が認めなかったことが無念で仕方なかった。本人には『ようやく認めてもらえたよ』と伝えたい」と語った。【伊藤一郎】
▽埼玉県の島村和男教育長の話 大変残念。今後の対応は判決内容を検討し慎重に決めたい。