ストーカー教諭:甲府市教委再々調査 教諭「ストーカー的」と認定 /山梨

ストーカー教諭:甲府市教委再々調査 教諭「ストーカー的」と認定 /山梨
毎日新聞 2011年2月8日(火)12時24分配信

 ◇県教委へ懲戒求める報告書 成績表外部流出でも
 09年1~2月に部活の教え子の女子生徒に連日深夜までメールを送りつけるなどしていた甲府市立中の男性教諭(50)について、市教委は7日、教諭の行為が「ストーカー的行為である」と認め、人事権を持つ県教委に対し、懲戒処分を求める報告書を提出した。教諭については、3年生全員の成績表を外部流出させた問題で、既に懲戒処分を求める報告書が出されており、県教委は今後、二つの報告書を基に処分を決める。【中西啓介】
 市教委は報告書に、生徒の保護者から提供されたメールのコピーを添付した。メールには、教諭が文字の色を変えて文章を作り、ハートマークなど絵文字を多用し、生徒の容姿を水着姿のSFアニメのキャラクターに例えていたことなどが記されていた。
 また、教諭が問題発覚直後、校長から指導を受けている最中に学校を飛び出して生徒宅で強引に面会したことや、自分の作った入試対策のプリントを生徒が取りに来なかったことに激怒し「人間のくず」と呼ぶなどの高圧的な指導をしていたことも、認定した。
 市教委は報告書に「ストーカー行為を禁じた県教委の懲戒指針に触れる行動で、厳重な処分を求める」と意見を明記した。教諭は市教委に出した顛末(てんまつ)書で「メールの回数や時間帯を含め大変不快な思いをさせておわびする」などと謝罪しているという。
 市教委は、昨年12月の毎日新聞の報道を受け行った再調査で、いったんは教諭の処分を求めない内容の報告書を先月12日、県教委に提出している。このため今回の報告書で「新たな情報が寄せられたため事実確認を行った」と再々調査に至った理由を記した。長谷川義高教育長は「再調査の内容が不十分だった。市民に不信感を与えたことは遺憾。調査の仕方を指導していく」と話している。
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 ■解説
 ◇自浄能力欠如した市教委
 市教委は再々調査の末、教諭の懲戒処分を求める報告書を県教委に提出した。教諭の行為を2度も「おとがめなし」と判断した市教委の調査には、現場の教員からも「隠蔽(いんぺい)体質」と批判の声がある。今回の問題を振り返ると、教員に甘い調査の実態と、自浄能力が欠如した市教委の姿が浮かび上がる。
 市教委は先月12日、ストーカー問題について教諭の懲戒処分を求めない内容の再調査報告書を県教委に提出した。当時の取材に対し、市教委の河西衛総室長と平井政幸学校教育課長が行った説明は、感受性の鋭敏な世代である被害生徒の立場に想像力の片りんも感じさせない内容だった。
 教諭がメールで生徒と自身を「マリンとサム」と呼んだことについては「他の子もあだ名で呼んでいた」と釈明。無理やり自宅に押しかけたことには「謝罪に行ったという認識」。深夜までメールしたことに至っては「生徒が塾から帰った時間帯に返信したため遅くなった」と言い出す始末で、教諭の言い分をうのみにしていた。
 市教委は当初から懲戒処分にする意識が薄かったとみられ、顧問弁護士への相談さえしていなかった。
 身内に甘い調査手法を一変させたのは、先月21日の長谷川義高教育長と生徒の保護者との初面談だ。長谷川教育長は、保護者側からの経緯説明の求めに応じて市教委内で面会。メールの実物を突きつけられて、問題の異常さに初めて気づき、再々調査を指示した。
 実は、長谷川教育長が見たメールの一部は昨年末の再調査で、平井課長と人事担当職員が見ていたのだ。にもかかわらず2人は、他のメールの存在の確認を怠った。市教委トップの教育長が保護者から被害内容を聴き取るのは異例だが、この対応がなければ、生徒側は泣き寝入りになりかねなかった。
 複数の不祥事が隠蔽されていたという現実は、市教委への信頼を大きく傷つけた。長谷川教育長は「調査方法のあり方を深く反省しなくてはいけない」と認めているが、猛省するだけでは不十分だ。まず、調査に携わった学校教育課長や人事担当職員の責任を明確にすべきだ。そして、課長クラスが管理監督能力を発揮できる組織に変えることが必要だ。現状では、学校教育課長のポストは、教員間で「校長を約束された栄転ポスト」と見られ、格上とされる校長には強く指導できる立場にない。抜本的改革が求められている。【中西啓介】
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 ◇教諭の行為と市教委の対応
 ◆09年
 1~2月  教諭が顧問を務める部活の3年女子生徒の携帯電話に連日深夜までメールを送信。2月末に生徒が担任に相談し問題発覚。教諭はその後も生徒宅に無理やり押しかけるなどのストーカー的行為を行う
 3月上旬  市教委は学校や保護者からの通報で問題把握。当時の学校教育課長は十分な調査をせず、教諭を口頭注意にとどめる
 3月下旬  他中学への異動が決まった教諭が成績表処理を男子部員に手伝わせ、全3年生約160人分の成績が外部流出
 4月    学校教育課長が問題の起きた中学に校長として着任。成績表流出問題を調査し教諭が流出元と判明するが、市教委に報告せず隠蔽
 ◆10年
12月21日 毎日新聞がストーカー問題を報道、当時の市教委が口頭注意にとどめていたことが明らかに。「当時の書類がない」として市教委が再調査開始 ◆11年
 1月12日 市教委が県教委にストーカー問題の報告書を提出。教諭の行為を「不適切」とする一方、「口頭注意後に生徒への被害が継続していない」として懲戒処分は求めず
    同日 市教委が毎日新聞の指摘を受け成績流出問題の調査開始
 1月18日 長谷川義高教育長ら市教委幹部が記者会見、成績流出を認め謝罪
  同21日 長谷川教育長がストーカー被害を受けた生徒の保護者と初面談、当時教諭が送ったメールを提供される。市教委は「新たな事実が分かった」として24日に再々調査を開始
 2月 7日 市教委は教諭の行為を「ストーカー的行為に該当し、懲戒指針に触れる」とする報告書を県教委に提出

2月8日朝刊

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