<慶応大医学部教授>無断で骨髄液採取…複数がん患者らから

<慶応大医学部教授>無断で骨髄液採取…複数がん患者らから
毎日新聞 2012年3月19日(月)15時0分配信

 慶応大医学部の教授(呼吸器外科)が、臨床研究に使う目的で、複数のがん患者らから事前に同意を得ないまま骨髄液を採取していたことが19日分かった。この臨床研究計画は、採取段階では同大倫理委員会の承認を得ておらず、厚生労働省が定める「臨床研究に関する倫理指針」にも違反している。慶応大と慶応大病院は同日午後に記者会見を開き、詳しい経緯を説明する。

 関係者によると、この教授は、がんの幹細胞に関する臨床研究を計画。昨年秋ごろ、複数のがん患者らに対して治療のための手術をした際、患者本人の同意を事前に得ることなく骨髄液を採取した。厚労省の指針は、臨床研究を行う場合、あらかじめ被験者に十分な説明をし、同意を得るよう定めている。

 その後、同教授は学内の倫理委員会に臨床研究計画を申請、倫理委は承認したという。

 内部告発を受け、慶応大が調査委員会を設けて調べたところ、無断採取の事実が判明した。大学側は採取された患者に経緯を説明した。現時点で、骨髄液採取による健康被害は報告されていないという。

 骨髄液は骨の内部にあり、血液成分の元になる造血幹細胞が豊富に含まれている。採取する場合は胸骨や腰部にある腸骨などに穴を開け、注射針を刺して採取する。かなりの痛みを伴うため、麻酔が必要になる。

 厚労省研究開発振興課の森下典子治験推進指導官は「先週、慶応大から報告を受けたが、指針が守られなかったのは残念。再発防止のために、現在の臨床研究の体制や研究者の倫理教育について考え直してほしい」と話している。【河内敏康、斎藤広子】

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする